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謎の建物

2019/06/03

去年のお盆のことだ。帰省していたときに近所の従姉と会い、世間話をしながら一緒に歩いて帰った。俺にとっては久々の帰省で、少し地元の風景も変わっていた。

川原の廃工場がなくなって、ステンドグラスのついた祭儀場みたいな建物になっていたりとか。話の流れで、従姉に川原の廃工場がいつ取り壊されたのか聞いてみたら、「工場は今もそのまま」という。

どうも俺と従姉の認識が噛み合わないので、工場を確認しにいくことに。工場のあるはずの場所には、俺が見たとおりの建物があった。地元民である従姉が、工場の建て替えに気づかないはずがない。

よく見ると、その建物もおかしい。俺が地元を離れたのは2年程前なので、新しく作ったならまだそれなりに綺麗なはずだが、見るからに築10年は経っている。謎の建物の入り口は、ガラスのドアだった。

さすがに侵入する気はなかったが、少し中を覗き込んでもいいかと思い、建物に近づく俺たち。中はロビー風になっていた。ステンドグラスがあるのは奥の部屋らしい。ロビーのソファに、20代前半くらいに見えるスーツ姿の男がいて、ペットボトルのお茶を飲んでいた。

青年は俺たちに気づいてドアを開け、にこやかに
「自分は仕事があってここに来た。君たちはこの町の人かな」
のようなことを言う。

爽やかな好青年っぽい雰囲気だったが、俺たちが地元民だと言ったとたん豹変。俺と従姉を建物内に引っ張り込み、奥につきとばした。以後の青年の態度は電波すぎる。覚えている発言を箇条書きにする。

・穢れた民族の末裔め。
・眼鏡は穢れた者の証。(俺のこと)
・ガリガリなのは穢れた者の証。(俺のこと)
・スカートは穢れた者の証。(従姉のこと)
・青と黒の服装は穢れた者の証。(従姉のこと)
・空が曇っているのは穢れたお前たちが訪れる予兆。空を返しなさい。
・お前たちから穢れたチョウの血を感じる。(チョウ?蝶?朝鮮?)

他にも言っていただろうが覚えきれないし、どのみち電波で意味不明だ。逃げようとすると攻撃された。
「ひざまずきなさい!」
とキレる青年に、俺は殴りとばされ、従姉は腕をひねりあげられた。そのとき、閉じたドアにまとわりつく黒い蝶を見て、青年は従姉をビンタし、俺を蹴って外に出ていった。

青年が、
「貴様だけは許さん!ひざまずきなさい!」
と叫びながら蝶を追いかけている間に逃げた。

翌日、おそるおそる工場跡を見にいったが、そこにあったのは謎の建物ではなく、見知った廃工場だった。地元の幼馴染にも、廃工場と謎の建物についてちょっと訊いてみたが、謎の建物を見たやつはいない。

青年はただの電波男だったのかもしれないが、穢れたチョウの血がどうのという発言だけ少し気になる。地元には『お盆になると、先祖が虫の姿をとって帰ってくる。だからお盆の時期は虫を敬え』という風習がある。どんな虫かは死者個々人で違い、俺と従姉の共通の祖父の場合はカラスアゲハだ。

だから何だよ、って話かもしれないが、穢れたチョウの血というのは、もしかして祖父の血のことか?そして、あのときドアにまとわりついて結果的に助けてくれた蝶は、祖父だったのかもしれないと思う。

ちなみに親戚はみんな日本人。弥生時代の渡来人の血くらいは流れているだろうけどね。

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