岩辺のカップル
2019/06/03
これは妹が体験した話です。
怖いというより、悲しい話です。
妹が伊豆の海へ旅行に行った時の話です。
夜、結構歩きにくい岩辺を友達と歩いていて(浜辺ではないので足場が悪い)、
花火をする場所を探していました。
で、前方にカップルが歩いていました。
会話は、なんかケンカのあとみたいなカンジで、
口数は少なかったそうです。
妹は聞き耳たてて、
野次馬根性で会話を聞いてやろうとしました。
やっと聞こえた会話は、
彼女「・・・ごめんね」
彼氏「いいよ、気にすんな」
彼女「でも・・・私のせいだし」
彼氏「いいって!お前のせいじゃないよ」
ってカンジな会話でした。
明らかに痴話ケンカのあとの会話みたいな・・・
会話が特におもしろいものじゃなかったので、
別に妹は気に求めなかったのですが、
ふと気付くと、さっきまでいたはずのカップルは消えていました。
足場の悪い岩場で、
周りにはなにも隠れるところもありません。
転んで海に落ちたとしても、
音や声が聞こえるはずです。
妹は友達に
「前のカップルどこいったんだろうね?」
と聞いたところ、友達は
「え???前に人なんていないよ」
と言ったそうです。
どうやら友達3人中、
見えて聞こえていたのは妹だけのようでした。
妹はとっても怖がりなので、
「気のせい」と思い込むようにしました。
花火の最中も、
妹はさっきのカップルが頭から離れませんでした。
花火のあとペンションに戻り、
オーナー、他の泊まり客達とワインなどを飲みながら雑談していると、
オーナーが
「そーいえば、この岩辺にカップルの幽霊がでるんだ」
と言ったそうです。
妹は酔いも冷めて、オーナーに
「その話教えてください」
と詰め寄りました。
オーナーの話では、
何年か前にその岩辺付近でダイビングをしていたグループがあり、
もぐっている最中に1人の女の子の背負っていたタンクが岩にはまっていまい、
取るのも不可能、脱ぐのも不可能な状態になってしまってた。
助けを呼んでも時間的に無理で、
彼女は残り少ない酸素がなくなり
死を待つだけになったそうです。
その女の子の彼氏もそのグループにおり、
彼氏は必死にその彼女を助けようとしていましたが、
どうがんばっても不可能でした。
彼氏は助けるのは絶望的だと判断したあとに、
意を決したように、自分も彼女の傍で
一緒に酸素がなくなるのを待って、死んでいったそうです。
それから岩辺では、しきりに謝る女の子と、
気にするなとなだめる男の子の幽霊が、
亡くなった季節の夏になると現れるそうです。
妹はその話を聞いた後に大泣きしたそうです。
怖いというよりも悲しくなって・・・
その彼氏は死ななくてもよかったのに、
その彼女を一緒にいる方を選んで死んでいった・・・
その深い悲しい愛に、涙が止まらなかったそうです。
私も妹にこの話を聞いて、涙が止まりませんでした。
早く2人がこの岩辺に現れなくなる事を祈ります。