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父の故郷

2019/06/02

大学卒業時だから、今から約20年前の話です。
心霊系ではないのであらかじめお断りしておきます。
大学卒業時、俺はお決まりの卒業旅行を考えていたのだが、
もともと一人が好きなことと入学時や就職内定時に多大なお祝いをもらった叔父に
お礼を兼ねて九州に一人で行くことにした。
九州の空港に降り立ち、
約束どおり叔父の家に電話をしたところ急用があるのでお金を払うから、
タクシーで来てくれといわれた。
俺は、地図と住所を持っていたため歩いていこうと考えた。それが間違いの第一歩だった。
その町を地図を見ながら歩き出して、俺は徐々に違和感を感じ始めていた。
そう、電柱に番地がまったく書いていない!
そもそも町の名前を示すものさえないのだ。
そして、どの家も表札がなく、たまにあっても住所が一切書いていない。
田舎特有の入り組んだ道、目印のない町、俺は道に迷ってしまった。
するとそこに人がよさそうなおっちゃんが歩いていた。
「すいません、フルマチ×丁目の○○さんの場所を知りたいのですが・・・。」
俺は多分なきそうだったと思う。
おっちゃんは暇だからとそこまで案内してやると快諾してくれた。
歩きながら、おっちゃんはいろいろな話をしてくれたが、話の内容はだんだんディープになっていく。
「あそこの家はねー、長男さんは隣の県で中堅企業に就職して役員になったんだってね。」
「三男さんは、市役所で土木課の部長さんでまあ、実質跡継ぎだよな。今もこの町に暮らしてるし。」
俺は唖然としていた。
だってそれはすべて正しく、しかも身内の俺が知らない話をどんどん話していくのだ。
「詳しいですね。」
「まあ、この町は全体が家族みたいなものさ。ただねーあそこの家は次男坊だけがぐれて東京に出て行ったんだよね。」
「で、おたくさんは何者?」
「・・・・次男坊の息子です・・・。」
おっちゃんは急によそよそしくなると、俺のお礼の申し出も断り、逃げるように立ち去っていった。
その夜、叔父に一連の話をしたら「家からあまり出ないほうがよさそうだね。」と言った。
まるで、君はよそ者としてしか見られていないんだよ、といわれたような気がした。
俺は以来、父の故郷には行っていない。
田舎に幻想もつのはやめよう、そうかたく心に誓ったのであった。

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