ひろしお兄ちゃん
2019/05/23
私は両親共働きの一人っ子、その上気の弱い方で、
なかなか友達は出来ず、いつも一人で室内遊びばかりしている様な子どもでした。
寂しいのもあり、やはり兄弟と言う物に憧れ、
いつも理想のお兄ちゃん像を思い浮かべながら、ままごとをしていた。
私はだんだんとままごとだけでなく、
一人公園で遊ぶ時も夕飯を食べている時でも、
空想の兄を登場させては会話をするようになっていました。
気味悪がった親は止めさせようとしたけれども、
その癖はなかなか直らなかったそうです。
しかし私も大きくなり、次第に社交的にもなりました。
そんな私も大人になり、今では4つになる娘と、お腹の中に赤ちゃんがいます。
私が妊娠する前まで兄弟をしきりに欲しがっていた娘が、
パタリと兄弟の話をしなくなったので、
「Mちゃんは妹と弟どっちだと思う?」
と私から話しかけてみると、
「お兄ちゃん」
と言いいました。
兄と弟の意味を間違えたのだと思い、
「Mちゃんの次に生まれて来るんだから、弟って言うのよ」
と教えると、娘はムっとして、
「違うよ。ママのお兄ちゃんがお腹に入っているんだよ。
ママのお腹に入る前まで一緒に遊んでたんだ」
と言いだした。
私は幼い頃の自分を思いだし、この子も寂しかったのだろうと解釈していると、
娘が、
「ひろしお兄ちゃん。いつもママを睨んでたよ」
ぞわっと鳥肌が立ちました。
私の想像の兄の名前もひろしでした。
母に流産などの経験は無く、ひろしお兄ちゃんは確かに私の空想でした。
ワケがわからないまま、私は不安の中でお腹を抱えています。