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招かれざる客

2019/05/21

いきなりだが、俺には全く霊感がない。
その俺が先日、仕事で地元では
結構有名らしい幽霊屋敷へ行くことになった。
俺はそっちの地域は疎いので全く知らなかったのだが、
『以前、住人が敷地内の柿の木で首吊り自殺した』
という、噂ではなく実話がある屋敷だ。
とは言っても、今もそこには人が住んでいる。
仮にAさんとしよう。
築15年ほどの大きな貸家なのだが、
あまりの幽霊屋敷っぷりにAさんも引っ越しを決意。
それに関わるいろんな手続きで、
俺はAさん宅を訪れることとなった。
初対面でAさんは、
「○○さん、霊感ありますか?」
と聞いてきた。
霊感がある人は、門から先に進めずに
引き返してしまうことがあるらしい。
Aさん自身、幽霊なんて信じていなかったのに、
何度も遭遇してしまったという。
俺は毎年、夏の目標が
「今年こそ幽霊を見る!」
なのに、いまだに達成できていないほど鈍感な人間だ、と告げると、
「じゃあ大丈夫かな…?」
と、若干心配そうにしていた。
そちらが地元の同僚から、
「お守り持ってけ」
なんて半分本気で言われたが、こんな機会は滅多にない。
勿論、何も持たずにAさん宅へ向かった。
Aさんは
「具合悪くなったら言ってね」
と、配慮とも脅しともつかない事を言ってくれた。
で、結果から言おう。
ダメだった。
鳥肌一つ、頭痛一つ、俺には起こらなかった。
逆さに女がぶら下がる、
という階段の踊り場でジャンプしたり、
血まみれの男がはいずる、
という和室で寝転がったりしてみたが、何も感じない。
最初は頼もしそうな視線を向けてくれていたAさんも、
しまいには
「○○さん、相当ですね…」
と、飽きれ顔になっていた。
すごすごとAさん宅を後にし、いや待て、
ひょっとしたらと帰り道の車内で何かが!
なーんて淡い期待を抱いていると、携帯が鳴った。
仕事中は電話を滅多によこさない母からだった。
何事か?と電話に出ると、母は
『あんた今どこにいるの?』
と聞いてきた。
どうかしたのかと尋ねても、
『大したことじゃない』
としか言わない。
俺は今一人暮らしなんだが、母は
『帰りに寄って、そしたら話す』
と言って電話を切った。
で、退社後に実家へ寄って、
その日母が体験した話を聞かされた。
昼間、母が居間でうたた寝していると、
半開きのドアの向こうを誰かが横切る気配がした。
母は咄嗟に、
「あ、お客がもう来ちゃった!」
と飛び起きた。
廊下へ出ると、
人影がその先の和室へ入って行くのが見えた。
慌てて和室へ行くと、そこには坊さんが一人座っており、
母が部屋へ入ると読経を始めた。
有り難いことだと思った母は、正座してそれを聞いていた。
しかし、そうしているうちに、
あれ?お客ってこのお坊さんだっけ?
という疑問が湧いてきた。
よく見ると、坊さんは黒い袈裟を纏い、
お経も葬式用?のものだった。
おかしいなぁと思いながらも、
そうだお茶の用意をしなきゃと立ち上がろうとした時だった。
廊下側の障子の向こうに人が立っている。
そっと開けてみると、それは母の父親、
つまり俺のじいちゃんだった。
じいちゃんは母に、
「そんなもんに茶なんか出さなくていい!」
と言うと、廊下の向こうに消えた。
それで母は、やっとこの坊さんが
『招かれざる客』
である事に気付いた。
ここを立ってはいけない、という強い思いが湧き、
読経を続ける坊さんに対峙した。
どれくらい経ったか、ついに坊さんの経が途切れた。
そして坊さんは、睨み付けている母に一言、
「何故だ?」
と言った。
母は何の躊躇いもなく、
「何故なら、私のものだからだ!」
と怒鳴った。
そして居間で目が覚めて、
無性に俺の事が心配になって電話したのだと言う。
おおぅ…と思いつつ、その時、
俺がどこで何をしていたのかを説明。
「やっぱりお前のせいか!」
と、久々にグーで殴られた。
母は昔から妙に勘の鋭いところはあるが、俺と同様に霊感はない。
常日頃、夢に登場したじいちゃんの墓参りをしては、
「お父さんは○○を見ないで死んだんだから、せめて守ってやってね」
と拝んでいるらしい。
これでおしまい。長々とすんません。
俺はじいちゃんのせいで、幽霊見られないんだろうか。

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