入ってはいけない小路
2019/05/13
知り合いの話。
彼の実家の山村に
『入ってはいけない』と言われていた
袋小路があったという。
駄目と禁止されると行きたくなるのが子供心。
という訳で、ある時、
従兄弟と二人で足を踏み入れたのだそうだ。
小路の終わりには赤く錆びた鎖が掛けられていて、
その先に獣道のような細い道が続いていた。
鎖を跨いで猶も進んでいくと、
割りと広い川に突き当たる。
川にはボロボロに朽ちた橋が架けられていて、
それを渡った向こう側に廃屋が二軒並んでいた。
気持ち悪くなって引き返したのだが、
このことを祖父に話すと酷く怒られた。
「橋は渡ってないだろうな!?」
聞けば、随分と前の大雨で、
その橋は流されているのだそうだ。
「お前等、誘われてたんだよ。
渡ってたら多分帰ってこれなかったぞ」
そんな馬鹿な、と次の日も
こっそり二人で確認しに向かったのだが。
昨日あったはずの橋はどこにも見当たらず、
川が轟々と流れているだけだった。