無知と悪意
2019/05/09
去年の秋の話なんだけど、
田舎に住んでるから近所の山にキノコ採りに行ったんだ。
山の入り口に車を止めて、
だいたい徒歩で3時間くらいのコースなんだけど、
ナラタケとかブナハリタケとかがけっこう採れる場所でさ。
で、歩き出して1時間位したとき、
40歳くらいのオバチャン三人組とすれ違ったんだ。
話し方からして、どこか関西方面の人達らしかった。
で、すれ違うとき、
オバチャン達がぶら下げてた袋の中がチラッと見えたんだけど…
入ってたのが、多分ネズミシメジとツキヨタケ。
しかも大量に。
知らない人の為に一応説明すると、両方とも毒キノコね。
ツキヨタケのほうは、死人が出るくらい強力。
俺は
『おいおいヤベーだろうが、バカだなコイツら』
って内心思いながら、
オバチャン達を小走りで追いかけて、
「そのキノコどうするんですか?」
って聞いた。
突然声をかけられてかなり怪訝な顔してたけど、
オバチャンAが
「どうするって、持って帰るよ」
って。
案の定だったんで、俺が毒キノコだってこと説明すると、
オバチャンBが、
「あー、やっぱり!
さっきのオッサンの言うてた通りやわ…うちらは、騙せへんで。
あんた、このキノコ欲しいんやろ?」
って言い出して…
そのままオバチャンの話を聞いていると、
どうやらオバチャン達は今日、山で会った年配の男性に、
「美味しくて珍しいキノコ」
って教わって、ネズミシメジとツキヨタケを採ったらしく、
しかもその時に、
「珍しいキノコだから、『毒キノコだ』って言って騙そうとする人がいるから」
って聞かされたらしいんだね。
何だよそれ?
そのジジイ何考えてんだよ?
キノコは間違いなく毒キノコで、
しかも、少し知ってりゃ見間違うことなんてあり得ないキノコなのに…。
取り敢えずオバチャン達を説得しようとしたんだけど、
完全に疑われちゃって無理だった。
最後には
「図鑑見てください」
とは言ったんだけど…
あんときは、山にもキチガイはいるんだなーって思った。