年代物の桐箪笥
2019/05/09
この話にはオチも何にも無い。
現在進行形でもう何代もそういうものだったから、
因果だとか禍々しい話なんてない。
俺の田舎には年代物の桐箪笥がある。
もう何代も前からそこにある、
というかなりのレアもの。
戦災にも遭わず
ただひたすら家人の衣装を守ってきた普通の桐箪笥。
同時に本当に大事なもの、
故人の形見などもそこには仕舞ってある。
その引き出しは普段は全く開かない。
鍵が付いてるわけでもない。
16ある引き出しの、
その引き出しだけが全く開かないのだ。
親戚は『サクヤサマ』がその箪笥にいると言う。
その引き出しが開くのは1月15日の一日だけ。
家人はその日を待って、
本当に大事なものや形見をそこに入れる。
カビやくすみが付く事無く、
いまもその中にはそういうものが入っている。
俺の赤ん坊のときの足形も、
昨年亡くなった叔母の形見もそこに入っている。
1月15日は頑として開かない引き出しが
音も無く開く貴重な日だ。
来年もそこに納めるものがあれば
多分帰省するだろう。