ネット上に存在する不思議で怖い話を
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立ち泳ぎ釣り

2019/05/08

立ち泳ぎしながらの小物釣りって見たことある?
海岸からわりと近い離れ瀬まで、
釣り道具一式もって泳いで行って釣るわけ。
釣った魚は
腰に結んだナイロンの網に放り込んで
また次のを釣る。
オレの親父が20cmくらいのカワハギを
20匹あまり釣るのを見たが、
腰の網に入れておいたカワハギに太ももを噛まれて
血が出てて何だか可笑しかった。
まー、都合1時間くらい立ち泳ぎしてる訳で
それはかなり凄いと思ったけどね。
オレの叔父(親父の弟)のSは
スポーツ万能で、泳ぎも達者。
この釣り方の名手だったそうだ。
その叔父から聞いた話。
叔父のSは春から秋の間、
潮が良い日には毎日のように
立ち泳ぎ釣り(?)をしてたらしい。
ある晩、いつものポイントまで泳いで行って釣りを始めたら、
小物と言うにはもったいない
良型のグレ(※メジナ)がポンポン釣れる。
(叔父のSは親父と違ってマメだから、一匹釣れる事に〆てたそうだが)
いつのまにか腰のナイロン網にはグレがいっぱい。
これはそのうち大物がかかるんじゃないかと思って粘っていたら、
不意にアタリがなくなって全く釣れなくなった。
仕掛けを点検したり、ハリスの長さを変えたり...
それでも釣れないのであきらめて帰ろうかとしたら、
腰の網を背後からチョコチョコ引っ張る者がいる。
叔父はてっきり他の釣り仲間が来たのかと思って、
「さっきまで釣れてたけど、今はアタリが止まってるよ」
と言いながら後ろを振り返った。
だけどそこには誰もいない。
不審に思いながら仕掛けを片づけていると、
また引っ張られる。
もう一度振り返ると、
すぐ後ろに月明かりに照らされたサメの頭が見えた。
グレを〆たときの血の匂いで
サメを呼んでしまったらしい。
体長は3m位、
人に危害を加える種類かどうかは判らないが、
急いで泳いだりしたら
サメを刺激してまずいことになるかもしれない。
叔父は一計を案じて、
網の中からそっとグレを一匹取り出して
なるべく遠くへ投げた。
サメは水音のした方へ
ゆっくり泳いで行って見えなくなった。
その隙に叔父は立ち泳ぎのまま岸へ泳いだ。
(立ち泳ぎだと水しぶきが立たないし、
サメの泳いで行った方向を見ながら泳げる)
案の定、サメはすぐに叔父の近くに戻って来た。
グレをもう一匹投げて少し泳ぐ。
サメが戻って来たら、またグレを投げる。
繰り返しているうちに岸が近づいて来て、
岩の角に手が届きそうになった。
叔父は残っていたグレを全部立て続けに投げて、
サメが泳いで行くのを確認してから素早く岩場に上がった。
それ以来、叔父は離れ瀬での釣りをやめてしまったそうだ。
「あの時道具を全部捨てて逃げて来たし、
何しろ命が惜しい」
と言ってた。
最近は船釣りを少しやるらしいけど。
「牛方と山姥の話に似てるね」
って言ったら、
「ああ、確かにそっくりだよな。
あの晩俺もそう思ったよ」
って笑ってた。
サメが内海の岸近くの離れ瀬までやってくることなんてほとんど無いらしいが、
何の巡り合わせか、よっぽど運が悪かったんだな。
(まあ助かったんだから結局運は良かったともいえるか)

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