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古い墓

2019/04/29

今年のお盆に地元に帰省して、
一人で墓参り行ったときのこと。
実家の墓がある墓地は、
駐車場を一段上がったところに広い墓地が広がってて、
さらに奥に行くとさらに階段があって、
そこを登ると小さい墓地が点在してる構造になってる。
広いほうの墓地にある実家の墓参りを済ませたあと、
数年ぶりに帰ってきたことだし、
ちょっと散策するかなって気になった。
奥の階段を登るとちょっとした小道になってて、
墓地の反対側まで抜けることができた記憶があったので、
ずんずん進んでいった。
途中、ちょっと開けたところにまた墓地があったんだが、
その左奥にある墓が目にとまって、なんの気なしに近づいたんだ。
それは随分と古い墓で、墓石の一部は苔生しており、
もう長いこと人がお参りしていないような雰囲気だった。
あまり無関係な墓に近づくのもアレだしと思って、
すぐにその場を離れようとしたんだが、
その時、不意に
「エツコさん、随分と遅くなりました」
って言葉が口をついて出てきたんだ。
まったくの無意識で呟いた言葉で、
自分でもなんでそんなことを言ったのか訳が分からず、
えっ?何?俺何言った??って混乱していると、
ラジオみたいな声というか音が頭の中に鳴り響きはじめた。
それと同時に、
とてつもなく胸が締め付けられる感覚に襲われて、
『ああ、みんな死んでしまったんだな』
っていう、懐かしいような悲しいような
そんな感情に包まれ始めた。
得体のしれない感情に怖くなった俺は、
慌ててその場を逃げ出した。
特にこれといった後日談もなく、それだけのことなんだが、
俺にとってはかなり不可解な体験だった。

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