雑炊
2019/04/26
ようやく笑い飛ばせるようになったんで、
俺の死んだ嫁さんの話でも書こうか。
嫁は交通事故で死んだ。
ドラマみたいな話なんだが、
風邪で寝込んでいた俺が、夜になって
「みかんの缶詰食いたい」
ってワガママ言ったせいだ。
嫁は近くのコンビニに買いに行き、
メチャクチャな運転のDQN車にはねられた。
DQNしね。
俺は事故の事を全く知らなくて、
救急車来てるな~と思いながらトイレに立った。
そしたら、台所にいる嫁の背中が見えた。
帰ってくる物音が一切しなかったのに、と思いながら、
「いつ帰ってきたの?」
と話しかけても、嫁の返事はなかった。
「みかんどこ~?」
と聞いても黙ったまま。
(いま考えると凄絶に阿呆だ)
俺は嫁の機嫌が悪いんだ、と判断。
そのまま寝室に戻った。
1時間後くらいに、嫁携帯から俺の携帯に着信。
かけてきたのは病院の人で、
『この携帯の持ち主が事故に遭って意識不明です』
と。
何いってんのか分かんなかったね。
嫁が携帯を落として、拾った人が事故に遭ったのかと思った。
嫁はうちにいるんだから。
だけど、家中さがしても嫁いないし、
病院の人のいう服装や特徴が嫁と一致してたんで、
とりあえず、なんかの間違いだろうけど万が一を考えて、病院に行った。
行ってみたらば、嫁が死んでた。
俺が家で嫁を最後に見た(と思ってた)時、
嫁はもう事故に遭ってて、
俺はその時の救急車の音を聞いてたんだ。
で、その後。
警察が来たり嫁の身元確認をしたり、俺が熱ぶりかえして倒れたりで1日入院。
駆け付けた嫁の両親と、一旦家に戻った。
そしたら、家を出る時にはなかったはずの雑炊が、鍋の中で冷めていた。
卵とネギとショウガがこれでもかーと入った、嫁の味の雑炊。
俺がショウガ苦手なのに、風邪ひくと必ず食わされた雑炊。
前日に家を出るときは絶対になかったはずなのに。
ここまで、俺が缶詰みかんが食えなくなって、ショウガが好きになった話。