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時を隔てて

2019/04/23

今までの書き込みを読んでて、ちょっと思い出した話がある。
霊媒体質の人には、意識が入れ替わることがあるけど、
これは意識がタイムスリップして入れ替わったとしか思えない話。
数年前、ある人に連れられて飲みに行ったら、
そこのホステスさんが霊媒体質だということだった。
お決まりの幽霊話かなと思っていたが、ちょっと違っていた。
きっかけは忘れたが、店の中で突然憑依されたらしい。
その女性がまるで男のような話し方に変わり、言葉遣いも変になった。
まるで昔の武士みたいな話し方。
たまたま客も居ないし、また例のやつが始まったかと、
他のホステスも放ったらかしにしていたが、
次第に様子がおかしくなっていく。
店の中をノシノシと歩き回り、もの珍しそうに見て回っては、
「これはなんだ?」と強い訛りのある言葉で尋ねたそうだ。
(なんとか意味は伝わったらしい)
ウイスキーのボトルを見ては、
「これはなんだ?」
ウイスキーと答えると、
「ういすきー?それはなんだ?」
という具合。
例しに飲ませてみると、始めて飲んだように思わず顔をしかめる。
特に天井のシャンデリアを物珍しそうに眺めていたそうだ。
電気を知らないらしい。
しかも、天井から吊す照明器具は見たことがないみたい。
(昔は行燈だったからね)
そのうち、「ここはどこだ?」と尋ねる始末。
ようやく自分が別世界に来たことに気づいたらしい。
「わしは帰る」と行って店を出ようとするし、
店から出たら出たで今度は、外の様子が近代的な建物ばかりだから、茫然自失となる。
半分パニックになりかけていたのを、他の人がなだめすかすのに苦労したそうだ。
一方、ホステスさんの意識は、
突然めまいに襲われたかと思うと、
辺りが白い霧に包まれている。
怖くなって走り回っていると突然、
視界の一部に霧が薄くなっている所が見えた。
そこへ行くと、今まで居た店とは違う外の景色。
それも遠くに川が流れ、馬小屋みたいな建物、地面は雑草が生い茂っている。
そのうち、誰かがそばを通り過ぎようとしていることに気づいた。
助けを求めて追いすがると、それは馬に乗った武士だったそうだ。
(武士というのは、ホステスの証言に基ずく)
彼女は正面に走り込み、必死に助けてくださいと懇願したが、
その武士は彼女の存在に全く気づかず、馬の歩みを進めていく。
どうやら彼女は、意識体だけで存在しているようだ。
孤独と恐怖に襲われた彼女は、
その場にうずくまり、ただ泣き叫ぶだけだった。
再び現代の店の中。
落ち着きを取り戻した『男』は、ようやく自分の素性を話し出したそうだ。
彼は馬子、つまり馬の世話係で、突然意識を失い、
気が付くとここにいたという話である。
その様子を見て、最初はホステスのイタズラだと思っていた同僚達も、
次第にそれが、本当に別人の意識が入り込んでしまったのだ、と考え始めたそうだ。
これはヤバイことになった。
そうは思っても同僚達にはどうしようもない。
とりあえず『男』に酒(日本酒)を与え、眠らせることに成功した。
その時点では同僚達も気が動転して、
その『男』が過去の人物だとは考え及ばなかったそうだ。
「どうする?救急車呼ぼうか?」
「いや。もう少し様子を見てからにしようか」
そんな会話をしてから一時間ほどして、今度は『彼女』が目覚めた。
彼女は自分が元の世界に戻ったことで安堵し、そしてまた泣きじゃくる。
同僚達もホッとしたが、一体なにが起こったのか混乱するばかり。
ああでもない、こうでもない。
結論のでないまま、時を過ごすことになったそうだ。
・・・と、ここまでは私が当事者達から聞いた話。
(実際は、こんなに理路整然と話した訳じゃない。
話があちこち錯綜して、とりまとめるのが大変だったけどねw)
そこで、私は彼女たちを前にこう結論づけた。
「もしかしたら、あなたは過去にタイムスリップしたんじゃないのかい?
原因は分からないけど、過去の馬子と、あなたの意識が入れ替わった。
馬子の意識は、あなたの肉体に入ったけど、あなたの意識は馬子には入らなかった。
でも、それで良かったかもしれない。
もし入ってたら、こうして元に戻れたかどうか分からない。
時を超えて霊媒現象が起きるなんて始めて聞くけど、可能性はある。
現在と過去で生じた出来事を付き合わせてみると、
馬子が電気も知らない昔の人であることは確かだし。
あなた達が作り話をしているとは思えない。現実に起こった出来事だろうね。
問題は、馬子がどの時代の人か?
現代人と一応の会話が出来るというんだから、そんな昔の人ではないだろう。
精々幕末から明治初期って所じゃないかな?」
私はこれ以上、納得のいく説明する言葉を持たなかった。
別に『ラストサムライ』に引っかけた作り話じゃないよw
ちなみに、現代を訪れた『その男』が、
再び過去の肉体に戻れたかどうかは一切不明。
ホステスは、もうあんな体験は嫌だとブルっていた。
幽霊を見るより恐ろしい体験だったようだ。
今自分の文章を読み返してみると、
状況が掴みにくい書き方をしてしまった。スマン。
当時の支離滅裂な証言が後遺症になって、
私の文章にまで反映されたようだ。
要は、現代の人間と、150年?隔てた過去の人間の意識が、
交代してしまったらしいというお話。
過去に行ったホステスの意識は、相手の男の肉体に行く前に自意識が目覚め、
途中で立ち止まったんじゃないかと推測する。
それが、霧に包まれた通路だったり、
武士にも見えない霊体となっていたんだろう。
現代に帰る過程はついに聞き出せなかった。
分からないと言うのだから仕方がない。
見知らぬ異空間でパニクってる時に、
そんないちいち状況把握など出来ないからね。
しかし、支離滅裂な証言ながら、
時を隔てた他人との意識交代だというのは、
当時の私にも直観的に分かった。

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