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ポケベル

2019/04/21

昔付き合っていた彼氏の話。
当時リア工房だった私は、
思春期にありがちな『情緒不安定』で、
夜中に一人で泣く事が多かった。
当時(10年近く前)はまだ携帯なんて高嶺の花で、
ポケベルしかなかったんだけど、夜中泣いてると、
必ず『アイタイ』と彼氏からメッセージが。
『イイヨ』と返事をすると、本当にすぐに来る。
道が混んでなくても車で15分はかかる距離なんだけど、
いつもぴったり15分で来る。
ポケベルを鳴らしてすぐ出掛けた、
としか思えないぐらいの時間。
泣いてない日はそういうメッセージが来ない、
という事に気付いたある日、さりげなく
「何でそんなしょっちゅう会いに来るの?」
と、冗談めかして聞いてみた。
すると彼氏は、最初は話したがらなそうな素振りをしていていたので、
世間話に変えたが、一時間程してポツリと呟いた。
「いつも夢でお前が泣いてっから、気になって来たら、
真っ赤な目パンパンに腫らしてっから、夢を無視出来なくなった」
そんな彼氏が亡くなって7年経つ。
亡くなった7年前は、彼氏は東京の大学に行って遠距離でした。
家業を手伝ってた都合上、
地元(京都)と東京を週二回は往復していたので、
週一回は会ってたと思います。
学校も真面目に出席していて、睡眠時間は一日三時間ぐらい。
心配してましたが、彼は取り合いませんでした。
五月のある日、彼氏からポケベルに『ゴメンナ』とメッセージが入りました。
謝られる覚えはなかったので、『何の事?』と返したものの、返事はなし。
その数時間後、彼氏は亡くなりました。
風邪をこじらせて入院していたのは知っていましたが、
実は心臓が悪かったらしく、過酷なスケジュールをこなす為に、
睡眠薬とカフェイン系の薬を交互に過剰摂取した結果、
過労で倒れて風邪をもらい、弱かった心臓に負担が掛かった事が原因でした。
私はもちろん、彼のご両親も心臓の事は知らなかった。
でも後から考えると、おかしな事が何度もあったのです。
二人で眠ってる夜、話し声に目を開けると、
彼氏が誰かに喋りかけている事が何度かありました。
大抵は、
「何でそんなに早いんだよ」
「時間をくれ」
「あと●年でいい」
そんな内容だったと思います。
後年になって、彼の回りの人が亡くなる前に必ず彼は予言していたと、
彼のご両親も話していました。
もしかしたら彼は、『彼を迎えに来てた人』と会話してたのかもしれません。
人より第六感というか霊感というか、そんな感覚が優れていたらしい彼が、
どんなに恐くて怯えていただろうか…と、何も出来なかった事だけが心残りです。
ちなみに彼の死後、ご両親によれば、
「部屋の整理どころか、捨てる物と誰々に譲って欲しい物を、全部分けていた」
と話してました。
「遺品の整理までしやがって。
親孝行に見えるけど、親より先に逝くのを知ってたのに隠して、
何て親不孝な息子だ」
親父さんが泣きながら笑っていた事を、今でも忘れられません。

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