暴走族を辞めた理由
2019/04/19
7年前に付き合ってた彼女のお兄さんの話。
彼女と付き合うまで知らなかったんだが、
彼女のお兄さんは中学~高2までK市では有名な暴走族だった。
が、高2の夏から、突然暴走族をやめて品行方正になった。
「なにがあったの?」
と彼女に聞いても、にやにやしながら
「兄貴に聞いてみなよ」
と教えてくれない。
ある日、彼女の家に遊びに行ったらお兄さんがいたので、
思い切って聞いてみた。
「なんでツッパリをやめたかって?うーん、おまえなら教えてもいいか…
俺さ、高2になってから学校には全然行かないで、毎日ゾッキーやってたんだよ。
本気でヤクザになろうと思ってたからさ、鑑別所・少年院上等ってな感じで。
で、夏休みのある日、夜中の3時ぐらいに家に帰ってきたら、居間に誰かいるんだよ。
おふくろかと思ってチラッと見たらよ…死んだオヤジなんだよ」
彼女のお父さんは、彼女が小学校低学年、お兄さんが中学の時に亡くなっている…
「でさ…そん時、俺はトップク(特攻服)着てたんだけどさ、
『親父?』と思った瞬間、金縛りにあっちゃったんだよ。
声出したくても声出ないし、逃げたくても指一本動かないんだ。
親父は居間の食卓に座ってさ、だまーってタバコ吸ってんだよ。
で、ゆっくりとこっち振り向いてさ…たった一言。
『いい加減にしろ』
…それだけ。それだけ言うと、親父はタバコの煙と一緒に消えてった。
俺、金縛りが解けたと同時に尻もちついちゃって、そのまま朝を迎えたんだ。
朝、お袋が起きてきて、『あんた、そんなところで何やってんの?』って言うから、
『今まで心配かけてきてごめん。もう、族やめる』って、その場で宣言したよ。
次の日、仲間のところ行って、『親父の霊に説教されたから、やめる』って言ったら、
他の奴らにすんげー大笑いされたけどな。
でも、マジで怖かったんだ。今思い出しても、鳥肌が立つくらい怖かった」
その話を半信半疑で聞いたのち、彼女の部屋に入ると、彼女がこんな話をしてきた。
「兄貴がお父さんのオバケ見る前に、私、お仏壇で毎日お願いしてたんだよね。
『お兄ちゃんが暴走族をやめますように。真面目になりますように』って。
その頃私、いじめられててさぁ。原因は兄貴。
K市のヤンキーなら誰でも知ってるような、大不良の妹だからって。
もう、悲しくて悲しくて、これも兄貴のせいだ、
いや、兄貴を育てたお父さんのせいだって恨んでたの。
だから、兄貴の話聞いた時、ざまぁみろって思ったw」
…結局、その2年後くらいに俺は彼女と別れて、彼女は違う男と結婚した。
でも別れたばかりの頃は、彼女の親父さんが現れるんじゃないかと、
夜中はすごく怖かったっけなぁ。