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弟はかなり見える人だった

2019/04/09

弟はかなり見える人だった。
後で知ったけど、
見え過ぎて何度も死ぬ目にあったらしい。
で、小学生の頃、弟と一緒にアニメのビデオ見てたら、
弟が突然横を向いて手を振った。
そっちの方向は台所、しかも電子レンジしか見えない。
思わず
「なにしてんの?」
と声かけたら、
弟は私のほうを向いてしばらくジッと目を見てきた。
そして私の肩に手を置き、10秒くらいして
「台所見てみて」
と言った。
白い着物着た髪の短い少女が静かに立ってて、
私は悲鳴を上げた。
弟の手が離れると、
すぐにその少女は見えなくなった。
弟は
「○○おばさんだから大丈夫だよ」
と言い、
「見守ってくれてるんだ」
とも続けた。
後で知ったが、父の姉が○○という名前で、
ちょうどそのときの私たちの年頃に交通事故で亡くなったらしい。
ただ父も祖母(祖父はすでに他界していた)も
弟には話したことがないと首を傾げていた。
弟は
「本人から聞いた」
とあっけらかんとしていた。
後にも先にも、
私ががっつり幽霊を見たのはそのときだけだった。
しばらくして、弟が交通事故にあった。
数箇所骨折し、一ヶ月程度の入院を余儀なくされた。
お見舞いに行った際、
両親が医者に話を聞きに行ったとき弟がぽつりと言った。
「○○おばさん、やっと居なくなったね」と。
・・・どうやら、守っているんじゃなくて
私に憑いていたらしい。
弟曰く、最初は本当に見守っていた。
だがブラコンだった叔母は、
仲のいい姉弟を見て姉の私に嫉妬を感じ始める。
そこで段々危ない存在になってきたので、
私の代わりに弟がその呪い?をわざと受けたらしい。
弟が事故にあったとき、
元々は私が行く用事を弟が代わりに行ってくれたのだ。
「俺に憑いてるほうが怖いから大丈夫かなって」
と弟はのんびり言った。
弟がよく見えるのは主にそいつのせいで、
弟自身が用済みになるまでは守ってくれると約束していたらしい。
そこまで話して弟は口をつぐんだ。
「俺は多分、これのせいで早死にするけど、
姉ちゃん守れてよかった」
と小さく呟いた。
小4が何言ってんだ、と思いながらも私は何故か泣いた。
ちなみに去年、弟は23歳の若さで自殺した。
遺書も何も一切なし、
高卒で働いていて数年勤めた勤務先での評判もよかったし、
対人関係も悪くなかった。

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