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夢の老婆

2019/04/01

今の住所に引っ越す前の、
もう16年以上も前の話。
駅から当時のアパートまで、
歩いて15分ぐらいの距離なんだけど、
仕事帰りとか結構薄暗くて、何だか嫌な通勤路だった。
ただ幸いにして、たいした霊感もない俺は、
何事かを見ることもなく日々日常を過ごしていた。
そんなある晩夢を見た。
深夜人気のないその道を、チャリで走っている俺。
一切の明かりも音もない、静寂の住宅街、
辛うじて月明かりのせいか薄ぼんやりと道が見える程度。
そうして公園脇の十字路に差し掛かったとき、
電信柱にこちらに背を向けて、
うずくまっている老婆のような影を見つけた。
恐る恐る近寄っていくところで目が覚めた。
まだ夜明け前で、部屋の中は真っ暗だった。
気味の悪い夢だなあと思いながらも、再び眠りについた。
翌日、会社で同僚に昨夜の夢の話を何気にしてみた。
最初は退屈そうに聞いていた彼だったが、
見る見る顔が青ざめていく。
話し終えたときには、かすかに震えていた。
「そんなに怖かった?」
俺が尋ねると、彼曰く、
2年前に夜、霊感の強い友人と俺の夢と同じ場所で
似たような体験をしたというのだ。
やはり電柱の下に何かがうずくまっていて、
その霊感の強い友人が近づいていった。
離れたところで見ていた彼のところに戻ってきた友人は、一言
「人間じゃなかった…」。
二人は慌ててその場を立ち去ったそうだ。
その後、紙に地図なんぞを書きながら場所を確認すると、
まさにピッタリの場所、
電信柱の位置まで完全に一致していた。
それ以来、あの道を未だに通れないでいる俺。

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