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闇プールに先客

2019/03/27

私達は毎年、決まったメンバー(男5人3人)で
夏になるとよく飲んだり遊んだりしていました。
そして特に暑い夜だと、
母校の中学校へ忍び込んで
闇プールなんかもしたりしていました。
いつだったかは覚えてないのですが、
8月中頃だったと思います。
その日の夜に闇プールすることが決まって、
9時頃友人宅に集合しました。
ここで私をA(女)、
体験した友人をB(女)、
もう一人をC(男)とします。
友人宅には私を含め5人集まっており、
世間話をしたり、テレビを見たりしていました。
あとの3人は、
それぞれの理由で遅れてくるようです。
Bは12時までバイトで、
そこから真っ直ぐこちらへ向かうということでした。
怠惰な時間が流れ、
もうすぐ日付けが変わろうという時、
誰かが言い出しました。
「なあ、あいつら(まだ来ていない3人)に、
待ち合わせ場所中学校って言わねえ?」
暇を持て余していた友人達は、
すぐその話に食いつきました。
3人に、
「もう中学校来てプール入ってる」
とメールを送りました。
しばらくすると、
友人の携帯にBからの着信が入りましたが、
周りの友人が
「出るな出るな」
と笑いながら制しました。
他の四人の所にも
Bから着信がありましたが、
皆ただ笑うだけ。
(今思うとひどいな)
最後に私の携帯に着信が入りました。
そこでふと思った。
中学校は小高い丘の上にあり、
周りは林で囲まれ、家もなく、
夜中になるとあまり車が通らない
とても閑静な場所にあります。
そんな中を、女の子一人が歩いているというのは、
とても危ないんじゃないか?
もし何かあったら…。
急に心配になり、私は電話に出ました。
『あ、中学校着いたよ。』
「今どこにいるの?」
『武道館側の校門。もうプール入ってんの?』
私の隣りで会話を聞いていたCが、
「もう入ってるから早く来いよ」
と割り込んで来て、
通話が終わりました。
誰かが中学校へ行く前に
コンビニ行きたいと言ったので、
私達は2人(迎え組)と3人(コンビニ組)に分かれました。
私はCの車に乗って、
二人で中学校へ向かいました。
集合した友人宅から中学校はとても近く、
三分程で着きました。
しかし、車内から校門を確認しても、
Bの姿はありません。
もしかしたら違う校門では?と、
外周を囲む歩道や敷地内にBの姿を探しながら、
車でゆっくり進んでいきました。
(図)


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上記の通り、門は全部で三つあり、
私達の行った門は図の一番下の門でした。
そして、直線の道路の中頃まで進むと、
その先にBらしき人の後ろ姿を見つけました。
少しスピードを上げて近付くと、
その背中は角を曲がりました。
車もその角を曲がり、
Bの横に止まりました。
するとBはこちらを訝しげに見やり、
また歩き出します。
あれ、気付いてないのかな?と思い、
電話をかけると、Bはすぐに出ました。
「着いたけど…」
『あ、うん。わかるわかる』
しかしヘッドライトに照らされたBは
校庭の方を見ていました。
再びCはBの横に車を停め、
窓を開けてBを呼びました。
ようやく気付いたBは、
驚いた表情でCを見ています。
「おまえ無視すんなよ」
「あれ?Cだ」
「気付いてなかったのかよ!…まあ、早く乗れ」
「え?なんで?」
「皆コンビニにいるんだよ」
「はあ?だってAがあそこにいるじゃん」
私とCは思わず顔を見合わせてしまいました。
会話が噛み合っていない。
だって私はここにいる。
彼女は誰の事をいっているのでしょうか?
「B!あたしここにいるよ!?」
「………え?じゃあ、あれは?」
素頓狂な声を上げたBに、
私は底知れぬ恐怖を感じた。
Cも同じだったに違いない。
Bに急いで乗るよう促して、
Cは車を発進させた。
私達以上に状況が理解出来ていないBに、
私は集合場所が変わったというのは嘘で、
他のメンバーはコンビニで待機しているということを説明した。
Bはその嘘に怒る様子もなく、
黙って聞いていた。
そして、先程の出来事を話出した。
中学校に着いたBは、
とりあえず私達の携帯に電話をした。
しかし、誰も出ない。
皆プールに入っていて気がつかないのかな?と思い、
最後私に電話をかけると、電話に出て、
「もうプールに入っているから」
と聞き、電話を切った後に、
敷地内に入ろうとした。
目の前の門は、
なぜか少しだけ開いていたらしい。
(人間が一人通れる位)
(ちなみに私が見た時は閉まっていました)
そこから入ろうとして、
ふと思いとどまった。
静か過ぎる。
水音も声も聞こえない。
前記にもあるように、
周りはとても静かで、
少し遠くの音でも良く聞こえます。
Bは敷地内に私達の姿がないか確認しながら、
歩みを進めた。
二つ目の門(図、横部分の)を過ぎた頃、
校庭の奥にあるプールから、
誰かが出てきたのが見えた。
(Bは視力がいい)
そこをゆっくり下りて、
こちらに向かってくる人がいて、
Bはそれを私だと思い手を振ったが、
向こうは無反応でどんどん近付いて来る。
図の一番上の門から少し左に、
小さな金網の扉があるのですが、
彼女はそこから中に入ろうと考えた。
すると、一台の車が近付いてきて、
横で止まった。
Bはそれを私達と知らないので、「?」と思い、
さっさと中に入ろうとした所で、私から着信が。
Bはこちらに近付いてくる人の方を見ながら、
すぐさまそちらに向かおうとしたらしい。
そこでCに声をかけられ、
助手席に乗る私に気付き、驚いた、と。
淡々と話すBに、私はおぞけが走った。
もし、私が電話に出なかったら?
もし、Bが敷地内に入っていたら?
コンビニに着いて、
先程あった出来事を皆に話すと、
私達は急いで残り二人に場所変更のメールを送った。
ほっと一息ついてから、友人の一人が
「Bの見間違えか、先客じゃねーの?」
と言ったが、
リアルタイムでBのあの様子を見ていた私とCは
即座に否定した。
後者だったとしても、
夜中に一人でプールから出てきた、
なんて、明らかに普通じゃない。
とりあえず、
もう一度中学校へ戻って確認してみようという話になり、
Cの車に乗り込んだ時だった。
ハンドルにもたれて、
Cが前を見据えてたまま、
発進しようとしない。
「どうしたの?」
「いや、あのさ、……これって……」
Cが指差した先。
フロントガラスの右下に、くっきりと手形が。
しかも、手をつけてから、
そのまま下にずらしたような、
5本の指の痕。
内側からついたそれを、
Cは顔をしかめながら拭き取った。
間違ってついたんじゃ?と言ったが、Cは
「こんな所腕伸ばさなきゃ触れないし、
第一触らねえよ!」
と怯えていた。
その後Cはコンビニで塩を買って
車にまいていました。
結局その日は、
最初集まった友人の家で飲み明かして、
解散しました。
お話は以上ですが、すべて実話です。

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