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心の瞳

2019/03/26

受験を控えた中学3年生になり、新たなクラスメイトになれたころ
合唱コンクールが開かれることになった。
担任は、熱血理科教師で、かなり分かりやすい授業をしてくれて
厳しいながらも生徒思いの先生だった。
コンクールは、まず学校内で簡単な発表会を行い、
それで各学年から代表クラスが選ばれる、という方法だった。
うちのクラスの場合、女子がやる気で、男子はそれに乗せられつつ
かなりがんばり、市内音楽会への切符を手にいれた。
市内音楽会前日、担任は
「がんばればなんでもできる、だけどがんばるのが難しいんだ。」
「お前らはがんばった、あとは自分の体が覚えてるよ」
って、みんなに言った。
かなり真剣で、よく覚えてる。
音楽会当日。
出発間際になって、
いきなり引率の先生(担任じゃない人)が
「○○先生(担任)が入院した」
っていうんだよ。
昨日まで元気だった人が
なんでいきなり・・とか思ったけど
その先生がいうには、軽い怪我だ、ってことで
一応は安心して、自分たちの出番、ってなったんだよね。
それで、課題曲を歌い終えて、
自由曲の「心の瞳」ってのを歌い始めた。
担任がすごい好きで、熱心に指導してくれた歌だった。
それで、間奏の時、ふと座席のほう見たら、担任が手を振ってて
すごいにこやかに笑ってたんだよ。
めったに笑わない実直な先生だったのに。
ふと、そこで思ったんだよ。
軽い怪我で入院なんかしない、って。
「心の瞳で~君を見つめれば~」
「愛すること~それが~どんなことだか~わかりかけてきた~」
曲が盛り上がってるとき、隣のやつが泣いてるんだよ。
俺も、もしかしたら、っていうか、かなり直感的にそう思ってた。
歌い終わって、みんな、○○先生いたよね、いたよねって
話してて、俺は、泣いてた隣のやつと、無言で座ってたんだ。
みんな先生を探すんだけど、いないんだ。
絶対、笑ってたのに。
学校に帰って、帰る準備してると
教頭先生が教室に来て、
「○○先生が、先ほど、亡くなられました」
って。
みんな、泣いたよ。むしろ、信じたくなかった。
なんでも、音楽会前日、
車で帰る途中、飛び出したコドモを避けて
思いっきり電柱にぶつかって、
助け出されたときは虫の息だったらしい。
葬式の時、自分らの願いと、
先生の親御さんの承諾で「心の瞳」歌ったんだよ。
すごい悲しかった。

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