ノック
2019/03/24
ある大学生が上京するためのアパートを探していた。
なるべく安い家賃のアパートがよかったため、
不動産屋にまずそのことを伝えると、
従業員はすぐに驚くほどの格安のアパートを紹介してきた。
しかしあまりに部屋の大きさや立地条件と比べて家賃が安いので、
何か欠陥でもあるのだろうと思い、
紹介されたアパートを見に行ったが
特にこれといった欠陥は見当たらない。
あと考えられる事はいわゆる
「曰くつき」というやつだろう、
そう思いはしたがとにかく自分の希望にぴったりなアパートだったので
入居することにした。
引越ししてきたその夜、
眠ろうとベットに入ると「コンコン」と
玄関をノックする音がした。
ドアホンが付いているのにおかしいと思いながらも
玄関を開けると、誰もいない。
気のせいかと思い再びベットに入ると
すぐにまた「コンコン」とたたく音。
もう一度玄関を開けるがやっぱり誰もいない。
またベットに戻ると、
またしても「コンコン」という音。
しかも最初より大きな音になっている気がする。
何度も繰り返される行為にこれがあの値段の理由かと思い、
無視をして眠ることにした。
するとそのノック音はどんどん大きくなって
しまいにはドアを叩き壊すかのような激しい音になった。
次の日すぐに不動産屋を問い詰めると、
前にあのアパートで火事があって、
あの部屋に住んでいた女の人が焼け死んだという話を聞いた。
つまりあれは外からのノックではなく、
中にいた彼女が必死に外に出ようとしていた音だったのだ。