夢でみる光景
2019/03/24
俺は昔からずっと夢でみる光景がある。
橋の向こうに一本道がある。
その向こうには古い神社。
歩くと足元の砂利が気持ちイイ音をたてる。
木でできた鳥居。
人気の無い神社に砂利の音と川が流れる音が聞こえて、
そこにいると何故か幸せな気分になった。
ある程度大きくなると、
多分自分の不安がそういう夢にあらわれるんだろう、
と分析するようになった。
うちは俺が赤ちゃんの頃に親が離婚して、
父親に引き取られた。
生後6ヶ月で離婚だったので、
1ヶ月違いで生まれた従妹の母親(俺からみると叔母)に育てられた。
父は酒飲んでは暴れるんだが、
田舎で長男だったせいか誰も文句言わなくて、
俺も小さい頃から殴られる蹴られるは当たり前、
酒瓶で殴られたりすることもあった。
見たこともない景色は、
誰か庇護者を求める自分が描き出したもので、
神社(=神様)にそれを求めているんだろうと分析した。
ところが、俺が社会人になってすぐ叔母から母が亡くなったと連絡があった。
親父は連絡するなと言っていたらしいけど、
叔母が教えてくれた。
葬式は終わったようだけど、
とりあえず母を知る機会だと思い、
母の生まれ故郷である東北のある村へいった。
そこで初めて母の写真を見たが、
全然何も思わなかった。
祖母とも会ったけど、
懐かしいとも思わず、
何故かがっかりした。
一目みて
『これが母さん・・・(涙』
みたいな展開を軽く期待したからだ。
でも、残念ながらそういうドラマみたいなことは起きなかった。
その日はそこに泊まることになった。
祖母に誘われて近所に散歩に出かけた時、
そこで見たことのある景色を見かけた。
川があってその向こうに一本伸びる道。
そこを辿っていくと夢で何度も見た神社があった。
祖母に聞くと、
母は初めての出産ということでここに戻ってきて俺を生み、
よくこの神社へも散歩にきていた、ということらしい。
俺がそこの村にいたのは生後2ヶ月目までで、
それ以後一度もいったことはない。
6ヶ月には親が離婚していたし、
写真も全部親父が捨てた。
そもそも、2ヶ月というと
多分目もそんなにはっきり見えているわけでもないと思うから、
どうやってあの神社のことを記憶していたのかもわからないから、
本当に不思議なんだよな。
でも、そこを歩くと聞き覚えのある砂利の音がして、
川の流れる音が聞こえ、
目の前には古ぼけた神社がどっしり構えていて・・・
母の写真や祖母の顔を見ても懐かしいと思わなかったのに、
何故かその神社を歩きながらボロボロ泣いてしまった。