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あぴ

2019/03/13

高校時代の話。
当時親父が猟銃を趣味でやっており、
猟犬を飼っていた。
小学生の時離婚し、
母親に引き取られて別居していたんだが、
ちょくちょく親父の所に行き、
俺もキジ撃ちや猪狩りに参加していた。
猟犬を飼っているプレハブは中々立派で、
簡素なドッグランも併設しそこそこ広かったんだが、
親父は掃除や片付けが苦手というか全く出来ない人種だったので、
小遣いを貰って掃除や糞の始末をするのが俺の役目だった。
その掃除中に起った出来事。
いつもの様にプレハブ内の糞を片付けていたら、
隅の壁に25~30㎝ぐらいの人形が立てかけてあった。
リカちゃん人形っぽいのをイメージしてもらえばいいか。
くすんだ赤い服でみすぼらしい人形だったが、
犬の玩具かと思い特に気にも留めず作業を続けた。
それでその人形をどかして掃き掃除し様とした時、
こちらを向いていた人形がクルッと壁側に向き直り、
そのまま横歩き?でカサカサッとすごい速さで、
犬が休む時に使う小さな小屋に入り込んだ。
俺は呆然とそれを見ているも、
頭の中はパニック状態。
少しの間動けないでいたが、
ハッとしてドッグランに放していた犬達を呼んだ。
例え犬でも猟犬であり、
一人よりは心強いと思ったから。
目だけはその小屋から離さず、
犬に小屋を調べる様指示したが、
犬達は警戒している様子はなく、
??という感じで俺の横から動いてくれない。
その小屋は屋根部分が取れる仕組みだったから、
勇気を出し思い切って剥いでみたところ、
中には何も居なかった。
ただ、屋根を持った時に
『あぴ』という人間の発音だけハッキリ聞こえた。
とにかく掃除だけ済ませ、親父が仕事から帰るのを待ち、
件の人形を犬にあげたか聞いたが、そんな物は知らんと言われ、
話も信じて貰えなかった。
人形ではないとしたら、
小人や妖精の類だったんだろうか?
嫌な感じこそしなかったものの、とにかく怖かった。

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