諭すおっさん
2019/03/07
俺の受験時代の恐い話をしよう。
俺は東北の農家の倅なんだが、
東京の大学を目指して勉強した。
そりゃもう必死で勉強したよ。
そしていざ、受験。
一人で東京に出てきたのも初めてだった。
目指すは早稲田、慶応。
でも試験会場でつい浮き足立ってしまって、
ろくに答案を埋められないまま
試験時間が終了してしまった。
もう不合格は確実だった。
俺は途方に暮れたね。
受からなかったら
親父の跡を継ぐことになってたからな。
当時の俺はくだんねー農家になるくらいなら
死んだ方がマシだとさえ思ってた(今は農家だがw)から、
ホテルに戻ったときに、これはもうマジで、自殺を考えた。
窓が開かないってことも知らずに、飛び降りようと、
部屋(8階)につくなり窓までもうダッシュした。
カーテンを開け、窓の鍵に手をつける。
すると、
「自殺しちゃダ~メ~だよ~」
声が聞こえた。
振り返るが、誰もいない。
窓の外を見ると、
オッサンが窓の下にへばりついていた。
ここは8階。
命綱もなしに窓の下に
へばりついているオッサンを見て俺は絶句した。
オッサンは俺と目が合うとにっこり笑った。
前歯が黄色くなってた。
一本欠けてた。
「生きてりゃいいことあるよ~」
そう言い残してオッサンは下に降りていった。
開かない窓のせいで
オッサンがどこまで降りたのかは分からなかった。
俺は自殺する気もなくなり、実家に戻った。