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古い写真の匂い

2019/03/05

自分の従兄弟で特に霊感の強い女の子がいるのですが、
本人に聞くと「ちっともいいことない」んだそうです。
違う従兄弟の結婚式に出席したとき、
その子はずっと胸に何かを握り締めて
うつむいてるんです。
最初は感極まってるのかと思ったんですが、
そうじゃなかった。
その後親戚内で
食事会みたいなのをしているときにも
ずっとうつむいてた。
私はそのときも大して気にせず
飯をパクついてたんですが、
どうも気になる「臭い」がする。
なんだかカビ臭いというか、
押入れの奥のものを取り出したときのような…
自分はこの匂いを表現するのに
「古い写真の匂い」と言ってるんですが、
どうも鼻についたんです。
その匂いの元を探してるうちに、
それはどうも窓の外から
臭っているような気がしてならなくなったんです。
そんな馬鹿なと思いました。
だってそこはビルの15階くらいでしたから。
でも、そんな自分と目が合ったのが、
その子だったんです。
なんとなくただならぬ気配を感じたので、
そのことを話しました。
うろ覚えですが、
以下彼女の言ったことを抜粋します
「あなたは私と同じように感じることはできるみたい。
でも、私みたいに見ることはできない。
でも、それはむしろいいこと。
こんなおめでたい席なのに、
自分は結婚式のときからずっと耐えている。
多分幸せそうな従兄弟を妬んでいるんだと思うけど、
死ねとか苦しめとか、
そんな言葉ばかりしか聞こえてこない。
私は聞こえるし、見えるけれど、
あなたは嗅覚で感じているんだと思う。
繰り返しいうけれど、見えないほうがいい。」
結局何が見えていたのかは
話してくれませんでしたが、
どうも「ソレ」は複数で、
ビルの窓の一面に張り付いているらしいのです。
そういって、彼女は手に持っていたものを広げて
見せてくれました。
それはお守りでした。
何でもあまりにもそういう目にあいすぎて
ノイローゼ気味になったときに、
相談に行ったお寺の偉い住職の方に貰った物だとか…
話はつい最近に飛びます。
私は京都の大学に通っていたのですが、
やっぱり友達といわゆる
「心霊スポット」に出かけることが結構あったんです。
でも、それまでに心底ヤバイと
感じるようなところはありませんでした。
あるとき、その中でも飛び切り向こう見ずな奴が
「すごい廃墟を見つけた」
って誘いにきたんです。
私はへえ~と最初行く気満々だったんですが、
いざ立ち上がろうとしたときに
スン、と鼻についたんです。
あの臭いが
あのときの感覚は一生忘れません。
なんていうんですか、
それまで感じたことのないような危機感と言うか、
もしそんなものがあるんなら、
それこそ背後霊がよってたって引き止めているような、
とにかく凄まじく行きたくなくなったんです。
私は友達の誘いを何とか振り切って、
自分の部屋に残りました。
でも、あの臭いは部屋から消えないんです。
「何か、部屋にいるのか?」
と半パニック状態で布団に包まりました。
それでも鼻で呼吸をするたびに、
あの臭いがします。
ガタガタと震えながらしばらくたったころ、
携帯電話が鳴りました。
当然出るのも嫌だったのですが、
着信がさっきの友人からだったこともあって
一応出たんです。
「よお、××やっぱり来ない?」
「だ、だから嫌だって」
「そうか、他のみんないるのになあ…」
「すまん、どうしても行きたくないんだ」
「そうか、ならいいや」
「すまん」
そのあと、また布団に包まって震えているうちに、
いつしか臭いはしなくなりました。
今でも覚えています、
その後友達に言われたことを。
彼は結局その廃墟(廃ビルらしいです)の前まで行ったところで、
強烈に私が嫌がったことを思い出して、
そこから電話をしたのだとか。
そして、俺がやっぱり尋常じゃないのを感じて、
彼も急に恐ろしくなったんだとか。
そして引き返したんだそうです。
彼は前に言ったとおり向こう見ずな奴だったんで、
「一人で」そこに行ったそうです。
「他のみんな」なんて言った記憶はないとか…
ほんと、もし誘いに乗っていたら
どうなってたかわかりません。
そんな事があって以来、
今でもなんとなく「嗅ぐ」ことに
躊躇いを感じることがあります。
少しはあの従兄弟の気持ちがわかったような気がします。

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