本文の文字サイズ

不可解な電話

2019/02/28

今年の一月の話。
実家に顔を出すと、旅行に行くから留守番してて、と頼まれた。
老いて仲の良い夫婦ってのはいいもんだな、
まあ気をつけて行ってきてくれ、と送り出した。
なので家には俺一人。
正月飾りを早々に剥がして、
雨戸も鍵も閉めっ放しで只管ごろごろしてた。
両親が出かけて二日後の夜。
二階の自室で子機の電話を使って友人とだらだら喋った後、
子機を充電器に戻さず部屋に放置して階下へ。
居間でぼんやりテレビを見ながら、飯を食っていた。
午前1時を少し回った時、電話が鳴る。
こんな時刻に何だろう、
まさか親父達に何かあったんじゃないだろうな、
と不安になった。
ダイニングテーブルの横に置いてある電話のところに這っていく
(足が痺れてたので)。
受話器を取る直前、
あれ、何か呼び出し音が妙な感じじゃないか…と思ったが、
とにかく取る。
受話器を耳に当てると、
カリカリという乾いた音だけで、
何も聞こえない。
「もしもし」
と何度か促したが、ずっと無言。
「なんだよ、無言電話かよ。
しかもこの電話、まだ買い換えてねーのかよ…
番号表示付いてないから不便だってのに」
などと思いつつ、ふと見ると、
「内線通話中」
のボタンが光っていた。
鳥肌が立った。
一旦受話器を耳から外し、
二階で物音がしないか耳を澄ます。
何の気配も物音も無い。
と云うかどうなってんだコレ、
戸締りはきちんとしてるし、
空き巣だとしても内線かける意味が分からないし、
故障か?相手の声が聞こえないのも故障のせいか?
混乱しながらもう一度受話器を耳に当て、
「どちら様ですか!」
と怒鳴る。
少し間を置いて、笑い声混じりの低い声が聞こえた。
「なあ、今、どこにいるの?」
本格的に怖くなり、ダッシュで玄関まで行き、
鍵開けてドアも開け放した。
傘立ての傘を掴んで、二階への階段に続く廊下を睨む。
暫くそのまま待機してみたが、何も現れる様子は無い。
「すいません、誰か警察呼んで下さい!」
と何度か叫んでみたが、
隣近所の家は皆出かけているようで、
うちと同じように戸締りしてあった。
何の反応も無い。
更に少し待機した後、意を決して二階へ。
片手に傘、片手に革靴を持って階段を上がる
(もし泥棒がいてナイフとか出してきたら、
先ず靴を投げつけてから傘で突こう…
とか合理的ぶったシミュレーションで正気を保ちつつ)。
部屋を一つずつ丹念に見て回ったが、誰もいない。
物が動かされた形跡も無く、
窓も壊されていない。
電話の子機は、俺の部屋に、
俺が放置した時の状態のままで転がっていた。
よし、誰もいない、取り敢えず安心…と思いかけ、
電話がまだ内線繋がりっぱなしなのに気付く。
ここで子機を耳に当てて、
またあの声が聞こえてきたらどうしよう、
と半泣きになった。
少し迷った後、靴を置いて代わりに電話を持ち、
「もし泥棒がいて…」
と先刻と同じ事を考えつつ一階へ。
数分かけて念入りに見回った結果、
誰もおらず。
電話も速攻で切った。
はい、以上。
いや、言いたい事は判る。
他の方々は死ぬほど怖いヤバイ場面に遭遇してんのに、
俺は不可解な出来事ってだけだし。
どうせ俺はヘタレだよ。
まじで怖かったんだよ。
今思い出しても怖いんだよ。
両親が帰るまで電話線引っこ抜いたままでした。
「何度も電話したんだぞ!何やってんだ!おまえは意味が分からん!」
とえらい怒られました。

にほんブログ村 2ちゃんねるブログ 2ちゃんねる(オカルト・怖い話)へ

よろしければ応援お願いシマス

人気作品

人気カテゴリ

RSS