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お見合い相手

2019/02/25

母が若かった頃(40年前)のお見合いの話。
当時の女は卒業→嫁入りコースが一般的で、就職した母は
「家庭の事情ですか?お可哀相に」
などと言われていた。
そして、やはり可哀相と思ったのか、
親類が速攻で縁談を持ってきた。
相手は資産家だが40近いブ男で、母は最初嫌がった。
しかし、小娘だった母から見ても、
多少世間知らずなのを除けばノリの良い明るい性格の男であり、
母は結婚する事にした。
そして、同性の同僚達と独身時代の思い出作りとして、
泊まりがけで遊びに出掛けた。
さて、琵琶湖で日焼けした母が家に帰ると、祖父も祖母もいない。
家内は静まり返っている。何かがおかしい。
そう思ったとたん、家の電話がけたたましく鳴り出した。
思わず受話器を取ると無言で切れ、
振り向くと、ヤツレた顔の祖父が玄関から覗いていた。
話を聞くと、母が出掛けた夜、見合い相手の男から電話があった。
祖母が友達と泊まりがけで出掛けている旨を告げると切れた。
そして真夜中に再びベルが鳴った。祖母が出ると男だった。
深夜3時を過ぎての電話に何事かと思った祖母に、
男は自分の両親への恨み言を述べ出した。そして電話は切れた。
起き出した祖父が廊下に出て来るとまた鳴った。
今度は祖父が出た。
やはり男が、自分の両親への恨みを述べる。
不機嫌になった祖父が、後日改めて出直すよう諭すと突如発狂。
自分が学校でも会社でも孤立して、すぐ辞めてしまうのは両親が悪い。
女性と付き合えないのも親が邪魔するせい。
自分は今発熱している。咳も出た。
なのに婚約者は遊びに出掛けている。
人間の屑だ。こんな冷たい女と結婚できない。など。
そして泣きわめき、斧でブチ殺してやる!とまで。
結局、明け方に通報。
恥さらしになるが、近所の安全のため回覧版を回した。
しかし警察は、
「男は風邪で寝込んでおり、家族が電話などしていないと言っている」
で終了。
警戒しつつ、近所に避難していたそうだ。
結局この縁談は流れ、母は父と出会って結婚した。
近年、その資産家の家でボヤが発生するまで、その男の存在は知られておらず、
付近の住民は、老夫婦2人暮らしだと思っていたらしい。
60過ぎた息子を、どんな思いで養い続けているのかと思うとほんのり。

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