細工箱
2019/02/20
祖父が宮大工をしていた頃、
何か細工箱を作ってほしいと依頼に来た人がいた。
しかし祖父は
「そんなもん引き受ける訳にいかねえ、
嫁入り前の孫2人もいるんだ!!」
と激怒していた。
依頼人は50代の男性二人だったが、
小さい風呂敷包みを持っていた。
私がお茶を持って行くと、
部屋の前で祖父が私の襟首を掴み
「入んな!早く出ろ!」
と庭先に突飛ばされた。
依頼人が帰る時
「フフ、フフフフ、アハハウフフ」
と風呂敷包みから子供の笑い声がした。
真っ暗いもやもやが風呂敷を覆っていた。
祖父は塩を撒き散らし酒を飲み、
私にも酒を飲ませた。
朝食全部吐いた。
母は震えながら私を病院に連れていった。
この事は忘れてと言った。
書いてみたら大して怖くなかった、ごめん。
祖父は95才でまだ生きているが、
あの時の話を聞きたくても耳が遠くて無理だ。
子供の笑い声は、
箱から今にも出て来そうなくらい近くに聞こえた。
母に聞いても、
箱の継ぎ目が歪んできてるから
新しいのを作ってって感じみたいよ、
位しかわからない。