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デジャブ

2019/02/11

親戚に不思議な子がいた。
2日に一回は既視感を体験するらしい。
どこかで見たことがある記憶が、
現実から若干遅れて再生されるアレだ。
ある日、俺はその子とその子の妹の3人で留守番をしていた。
夏の暑い日だった。
親は寄り合いか何かで出かけていて、
冷房の効いた締め切った部屋の中にも蝉の声が響いていた。
お菓子を食べながら、トムとジェリーを見ていた。
妹がその子に言う。
「おねえちゃん、ジュースなくなった」
その子は冷蔵庫の前に行きジュースを取り出し、
妹のコップに注ぎ始めた時に
「あ…これ見た」
と呟いた。
「おねえちゃん、もうちょっといれてよ」
「おねえちゃん、もうちょっと入れてよ」
寸分違わず同じことを同じように発音する姉妹。
その子は俺の方を見る。
「またデジャブ?」
「またデジャブ?」
俺の声と重なる声。
その後、誰も座っていないソファを見る。
「私の言葉、取らないでよ」
そう言った直後、その子が青ざめて、俺の背中に隠れようとする。
「どうした?大丈夫」
俺の問いかけにも応えず、肩に置かれた手で、
どうやら震えていると分かった。
「ピンポーン」ピンポーン
呼び鈴がなる。
まだデジャブは続いているようだった。
またソファを見る。
「出たら死ぬよ、ふふふ」
直後、その子が倒れた。
驚いた俺はその子を抱き上げたが、
自分の手に余ると思い、寄り合い所に電話をした。
電話がつながって、すぐ
「◯◯が倒れた!」
と告げると、親は『すぐ戻る』とだけ言って電話を切った。
その間、ずっと玄関からは、
ガチャガチャと何かをする音が聞こえていた。
それから数分後、親が戻って来た時に、
玄関で鍵をこじ開けようとする男に出くわしたらしい。
男はすぐに逃げ出し、捕まえられなかった。
数日後、隣の市で強盗殺人を起こし、その男が捕まったと聞いた。
そんな事件から10年後の昨年夏、初めて詳しい話をその子に聞いた。
あの時、部屋の中には3人しかいなかったのに、
デジャブの中では4人目がソファにいたらしい。
それも血まみれの女の子。
人形を抱いて楽しそうにしていたらしい。
その子は夢の中で霊の声を聞き、俺たちを助けてくれていた。

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