前方に自転車
2019/02/08
自転車に乗ってて体験した話。
自分の向かいから走ってくる自転車がいるとさ、
お互い道の譲り合いでフラフラして大変になることってあるよね。
俺は気づいたらなるべく早く端に寄ってやり過ごしてて、
あの日も30m位先に自転車が走ってるのを見つけて、
道の端に寄せながら走ってた。
そしたら向こうも同じ側にわざわざ寄っていくんだよ。
仕方ないから今度は反対側に避けたんだけど、
またすぐ同じ側に寄せてこられてさ、ちょっと焦った。
ボーッとしながら走ってたから、
相手をちゃんと見て避けなきゃヤバい、と。
でもそこで気づいたんだけど、
相手の自転車との距離が変わってないの。
あれ?と思ってよく見てみると、
向こうの自転車と自分、進行方向が同じだったんだよ。
普通はそこで安心するんだろうけど、
それに気づいたらもう俺はパニックになった。
だってそいつこっちに顔が向いてんだよ。
黒のだぼっとしたワンピースを着てて、
確かにこちら側に顔がある。
夕方の光の加減のせいか
顔の表情ははっきり見えないんだけど、
確かに顔なんだ。
帽子でもお面でもない。
なのにそいつは自分の前方を同じ方向へと走ってるんだ。
よく見て確かめると、自転車の向きは普通で、
体は正直どっち向いてるのか分からなかった。
黒のワンピースの裾が足までかかってんだよ。
もう訳がわからなくなって、
でもヤバいってことは感じてたから、
とっさに曲がって横道にそれたの。
それからは後ろは振り返らずに
かなり回り道して家に帰った。
無事何事もなく帰宅できて良かったけど、
後になって思い返してみても怖いんだ。
だってそいつ、
俺が避ける度にすぐ同じ方向に動いてたんだから。
確実にこっちを認識してたってことだろ?
それに、いつの間に俺の前を走っていたのかもはっきりしないんだ。
あの日以外そいつに遭遇したことは無いんだけど、
今でも前方に自転車が見えると一瞬ビクッとなる。
一体奴は何だったんだろう。