普段の景色に何気無くあるもの
2019/01/28
昔祖父から聞いた話。
ただ細かいとこは微妙に違うと思う。
もう祖父は他界しているんだけど、
存命の時に良くサシで酒を飲むことがあった。
片目は失明していたけど大病もせず元気だった。
なにより人柄がとても良かった。
彼は話好きで、よく本当か嘘か分からない話をしてくれた。
その中でも印象に残ってる話。
幽霊とか呪いとかそういう類のものは基本目に見えないだろ?
でも俺が一番畏怖するものは、
『普段の景色に何気無くあるもの』
なんだよ。
例えば、散歩する時には景色を見ながら進むわけだ。
その時にいちいち、ここに看板があって、
あそこに花が咲いてて、家が何軒あって…
とかはわざわざ確認して歩かない。
『なんとなく』ボヤッと視界にある。
だがそれだけで勿論十分散歩は出来る。
そこになんとなく異物っていうか、
あるはず無いものが目に映ると確認してしまうわけだ。
例えば、いつもの散歩道で昨日まであった建物が壊されてるとか、
通り道に大きな冷蔵庫が捨てられているのを見るとか。
でもそういうのは慣れてくる。
一週間後にはそれらも景色の一部として認識出来てくるだろう。
でもどれだけ経っても違和感が拭えないものがあるんだ。
俺の場合はかかしだったんだよ。
ある日、田んぼにちょっと気味悪いかかしが立っていた。
最初は
「なんだこれ気味悪いなぁ」
って思った。
でも何度見ても慣れないんだよ。
それどころかますます気味悪くなってくる。
景色にそのかかしがあることが生理的に受け付けなくなってくる。
そうすると夢にまで見るのな。
んで不思議なことに、視界の端に映るようになる。
嘘だと思うだろう?でも本当なんだ。
一回や二回なら見間違いだろうと思う。
けど日に何回も見るようになってな。
んで病院に行ったら、
ほとんど右目の視力がなくなってたのよ。
手術したけどダメだったわ。
ありゃ俺の目は死神でも魅入られていたのかね?
祖父の片目の視力がないのは知っていたけど、
そんな理由だったのか…と思うほど俺も幼くなかった。
けれどその話は何故かすごく印象に残っていて、
当時ちょっと怖かった。
最近そのことを祖母に聞いてみたら、
「目は昔から悪かったよ。
本ばっか見てビン底みたいな眼鏡かけとった。
その言い訳だろ?
都合悪いことは全部不思議話に持っていく人だったから」
と、いくつかエピソードを披露してくれた。
ほとんど祖父から聞いた話だったし、
荒唐無稽であったけれど、
嬉しそうに話すばあちゃん見ると、
ちょっとじいちゃんが恋しくなって書かして貰いました。