ネット上に存在する不思議で怖い話を
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返却BOX

2019/01/23

しまった!今日がDVD返す日だった!!
夜中布団の中で、はっと気付いた。
時計を見ると1時ちょうど。
店は深夜1時までなのでまだ間に合うかも!
私は飛び起きてレンタル店へ走った。
店に着くと、もう中は真っ暗で営業は終わってしまったようだ。
え~どうして?
いくらなんでも1時ちょっと過ぎまでは営業するだろ、普通。
仕方ない、返却BOXに入れとくか。
返却BOXにDVDを入れようとしたら、
入れ口に何か白いものがあった。
なんだこれ?ビニール袋の持つ部分?
あっ、そうか、私の前に返却した人が
ちゃんと入れずに引っ掛かったんだ。
・ ・ ・もしかしてこれってチャンス?
いいDVDとかだったらもらっちゃおうかな。
周りに防犯カメラや人が居ないのを確認してから、
私は入れ口から少しだけのぞいているビニール袋の端を引っ張り、
引き出そうとした。
「ズルッ」
勢い余ってかなり乱暴になってしまい、
ビニールは破け、中身は飛んで私にぶつかって
バラッと落ちた。
結構大きな音がした。
「カラッ、カラッ・・・」
まずいな、誰かに見つからなかっただろうな?
少しその場を離れて見回してみたが、
大丈夫、誰も居ないようだ。
さて、何のDVDかな?ケースは見当たらず、中身だけ落ちている。
傷がついてなければ良いけど。
私は拾い上げようとして手を伸ばしたが、そのまま固まった。
それはDVDではなく、鏡だった。
手鏡の取っ手部分をむりやり折って
丸い部分だけになった鏡だった。
なんで?!私は意味が解らず、
しばらくその鏡を見つめていた。
その時、店の前を車が通りすぎた。
一瞬だがヘッドライトの光がこちらに向いた。
鏡に反射してピカッと光った。
まぶしい!思わず目をそらしてしまった。
再び鏡を見ると、無くなっていた!
ほんの一瞬目を離しただけなのに。
更に分けがわからなくなって、もういいや、
とりあえず自分のDVD返却して帰ろう。
そういえばあの入れ口、
壊れて無いよな?かなり強引に引っ張ったからな。
入れ口を見てみると、ギョッとした。
入れ口から手が出ていてこちらに向かって
「おいで、おいで」
をしていたのだ。
・ ・ ・いや、待てよ、できすぎだ。
あ~、なるほどねえ。
店を早めに閉めてバイトが私みたいな客に仕掛けたいたずらか!
たしか前に自販機の取り出し口から
手がでていたとかネタがあったよな。
鏡にも糸かなんかついていて
私が目を離した隙に隠したんだろう。
「おいで、おいで」
をしている手を良く見てみると女の子の手のようだ。
ピンクのマニキュアをしている。
耳をすますと、心なしか、小さな話し声も聞こえるようだ。
私は
「うわ~」
と大げさに驚き、一目散に逃げた。
ように見せて、こっそり店の裏に回り
建物の影から入れ口を覗いて見た。
まだ
「おいで、おいで」
をしている。
随分やってるな。
もういいだろ。早く出てこないかな。
もし可愛い子だったらこれをきっかけに・・・などと考えていると、
「ポトリ」
手首から先が落ちた。
・ ・ ・なにも考えられなくなった。
ただただその手首を見ていると、
「カサカサ、カサカサ」
指を足のように使いながら這いずりはじめた。
なにかを探しているかのよう・・・
あっもしかしてあの鏡か?これって相当ヤバイんじゃ。
「ガタッ」
無意識のうちに壁に体をぶつけてしまった。
すると手首が動きを止めた。
指が5本ともこちらを向いた。
しまった、見つかったか!!
手首は私の方へなにかの生き物のように這ってきた。
逃げようとしたが全く動けない。
「カサカサ、カサカサ」
足を1歩伸ばせば届く所まで近づいた。
もうダメだ、私は歯を食いしばって目を閉じて観念した・・・
だがそれは私の横を通りすぎていったようだ。
だんだん「カサカサ」という音が遠ざかっていく。
5分ほど経っただろうか、
そっと目を開けて辺りをうかがうと、何も無かった。
汗をびっしょりかいたが、
冷静になって自分を思うと少し恥かしくなってきた。
何、真夜中に店の裏で立ちすくんで汗だらだらかいてんだ!自分?
手首が動いたように見えたのも、
ビニール袋が風で転がったかなんかだろう。
は~あ、あほだな自分。
思わず一人ぼけ突っ込みをしながら店の前に出た。
端の方にまだビニール袋が転がっている。
もう騙されないって!
まあ私をあれほど怖がらせたビニール袋だ。
悔しいから1回くらい蹴飛ばして帰るか。
近づいて見ると、ビニールではなかった。
そこには折れた鏡を大事そうに撫でまわしている手首があった。
私は無言で後ずさりをしてクルッと振り返って、
これ以上速く走ったら死ぬかもという勢いで家に帰った。
そしてそのまま寝入ってしまった。
次の日の朝、親が血相変えて起こしに来た。
「お前が良く行ってるレンタル屋、強盗入って女の子が死んじゃったって!」
えっ、昨日返しに行ったけど・・・と言おうとして止めた。
机の上にはまだ返していないDVDがあったので、
昨日の出来事は夢だったんだろう。
あ~変な夢見たな。
なんか良く寝たはずなのに疲れたよ。
店に警察がいっぱい来ていて大騒ぎだから見に行こうと言うので、
着替えようとしたら、何かが胸のあたりからポトリと落ちた。
キラキラ光っている。拾い上げてみると、
鏡の破片だった。

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