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山奥の家

2019/01/14

まあ、かなり前の話なんだが、一時期渓流釣りに凝ってた。
友人が本格的に嵌ってて、それに付き合って始めたのだが、結構楽しかった。
川の上流を目指して、山奥まで入る事しばしば。
絶好のポイントを探して、人跡未踏の場所に踏み入ること自体、
ほとんど探検気分だった。
ある日、友人と二人で、かねてから目をつけていた川に行った。
四駆で林道を越え、悪路が途切れる場所に車を止めようとすると、
友人がエンジンの不調を訴えた。
エンストしちまった。
もう釣りどころじゃない。
こんな人気の無い山奥まで来て、どうやって帰るんだ。
とりあえず知り合いかJAFを呼ぶしかないだろってことになった。
徒歩で山道を引き返していると、何か私道みたいな細い道を発見した。
県道まではまだ遠い。人家があるんだったら、そこで電話を借りようって
話になったんだが、果たしてこんな山の中に電話なんか来てるのか?
疑心暗鬼のまま進んでいくと、平屋らしき建物の屋根が見えてきた。
予感どおり人の気配が無い。
まったくの無駄足になって、二人ともどっと疲れが出た。
近づいて家屋の様子を見るに、ほとんど廃墟同然。
どちらともなく、ちょっと家の中に入ってみるかってことになった。
がたのきた雨戸には鍵がかかってなくて、
開けようとすると枠が外れそのまま倒れてしまった。
何があったんだってくらい、中は荒れ果てていた。
畳はめくれて投げてあり、本棚は倒れ、その上に横倒しになったストーブ、
汚れた布団や衣料、家財道具などがばら撒いてあるかのよう。
足の踏み場もないなと思っていると、友人から声がかかった。
二人で玄関の方に回ると、土間と上がり框があって、
板張りの居間には囲炉裏らしきものが、といってもシロアリに食い荒らされて、
床板は穴だらけだったが。
居間の引き戸を開けると、工房らしき作業場があり、大量の陶器の破片が散乱している。
陶芸家でも住んでいたのだろうか。
外には窯らしきものもあったなと話しながら、作業場から入るドアをゆっくり開けた。
一つは洗面所と浴室。ここも泥だらけで、浴槽には澱んだ雨水が溜まっている。
もう一つのドアを開けようとして、何か背すじがぞっとした。
友人がドアノブに手をかけたと同時に、
もう行こうと声をかけたのだが、扉は開かれてしまった。
その部屋は整然としていたのだ。
ここの住人が寝室として使っていたのかもしれない。
六畳間に布団が敷いてあり、横には小さなちゃぶ台があった。
ちゃぶ台の上には空の湯飲みと灰皿があり、そこにはたばこの吸い刺しが。
まるで今しがたまで、誰かがそこにいたような感じだった。
布団の枕もとには石油ランプがあり、近くには週刊誌が広げてあった。
友人は無言でその週刊誌を拾い上げ、発行日の日付を確かめた。
それから、「三年前のだ」とつぶやき、お互い顔を見合わせた。
と同時に、二人ともわめきながら部屋から転がり出た。
私道に分岐する林道まで走って逃げて、そこで息をつきながら、しばらく休んだ。
「あそこってさ、発狂した人間が住んでたんじゃねえかな」
僕は自分の恐怖についてしゃべった。
友人は目を閉じて、
しばらくこちらの話を聞いているようだったが、
ずっと無言だった。
どう思う?こちらから訊ねると、友人は静かに話した。
「あの部屋だけど、・・・・・虫とか動物が入ってきた形跡が無かったよな」
「本当に人間が住んでたのかな」
「さて、車どうすっか?」
僕は聞いていない振りをした。

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