つむじさん
2019/01/07
『つむじさん』という遊びが、
消防の頃クラスの女子の間で流行っていた。
まず、
「つむじさん、つむじさん、こちらのツムジにお入りください」
みたいなことを言いながら、
ターゲットの女の子の体操服の背中に指を押し当てて、
ぐりっと左にねじって渦巻きの皺を作る。
すると、次の体育の時間までに、
渦巻きの皺を作ったところに『つむじさん』がドンとぶつかって、
その子を転ばせようとするらしい。
たぶん、暗示の類だと思うけど、
見えない何かに押されるという、
オカルト的な現象を楽しむだけの遊びだった。
それが、いつの間にか
『押されて転ばなければ良いことが起こる』
に進化して、呪文も
「つむじさん、つむじさん、○○ちゃんに良いことありますように」
に変った。
最終的には、
「つむじさん、つむじさん、○○ちゃんの願い事『××』を叶えてください」
になり、
クラスの女子の間で爆発的に広まった。
そして、ある日。
体育の授業が始まる前、
俺含む男子が女子の着替えを廊下で待っているとき、
教室の中で悲鳴が上がった。
女子が一人飛び出してきて、
先生を呼びに行けと言う。
保健係が走り、担任と保健の先生がやってきて、
意識のない女の子を教室から運び出した。
後から班の女子に事情を聴いたところ、
その子は友達の手を借りて背中に作らなきゃいけないツムジを、
自分で胸に作ってしまったそうだ。
そうして着替えてる途中、
背中ではなく胸を『つむじさん』に突かれ、
仰向けにぶっ倒れて後頭部を強打し、失神したらしい。
幸い、命に別状はなかったけど、
それ以来つむじさん遊びは消滅した。