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水泳大会

2018/12/29

夏になると思い出す。
うちの町は小学校が4つあって、
体育祭やら水泳大会やら鼓笛パレードやらを
4校合同でやることが多かった。
その内の町内水泳大会での話。
私は最後の競技、
4校対抗50m×4リレーのアンカーだった。
他の学校のアンカーの子に対抗心を燃やしてたり、
今年も優勝すれば9年連続優勝だ、とか
もろもろの理由によりガキんちょなりに燃えていた。
水泳大会で使用した25mプールは
町の中心の小学校(S校)のプールで、
全部で6コースあった。
その内、リレーで使ったのは
1コースと6コースを除いた
2、3、4、5コースだった。
うちの小学校は確か5コースだったと思う。
ひょっとしたら2コースだったかもしれない。
だが、スタート地点から見て
自分の右側が空きコースだったのは確実だ。
リレーが始まり、レースは3番手まで
うちの小学校とS校がトップ争いをしていた。
そしてそのまま僅差でアンカーへと繋がれた。
水の中へ飛び込み、私は夢中で泳いだ。
S校のアンカーには負けたくなかったし、
何より優勝が見えている。
だから必死で泳いだ。
25メートル地点でターンする。
残り25メートル。
そこで私は気がついた。
私の左前方(身体1つ先ぐらい)に
泳ぐ人影が見えた事に。
いつの間にかS校のアンカーに
あんなに引き離されてしまった。
私は咄嗟にそう思った。
あれだけ僅差の勝負をしていたのに、
私でこんなに引き離されてしまったらシャレにならないし、
メンバーにも申し訳がたたない、
と私はさっきよりも必死で泳いだ。
しかし差はいっこうに縮まらない。
左前方に見えるバタ足の泡、っていうのかな。
それを見ながらアレを追い抜かなきゃ、
と必死で追った。
ラスト5メートルのラインが見えたところで、
もうダメだと思った。
どう考えても追い抜けない。
私は負けたんだ。
そう思い、壁にタッチしてゴールした私は
水から顔を上げ、メンバーに謝った。
「みんな、ごめん…」
しかし。
私の目に写ったのは
よくやったと破顔している担任と、
抱き合い喜ぶメンバーたち。
訳が分からず、
「何位だったの?」
と聞くとすぐさま
「優勝したんだよ!」
と返された。
そんなはずはない。
だって、私の前を泳いでた人がいたんだから。
そう言おうと左のコースを指差して、
私は固まった。
指の先のそこは空きコース。
そして思い出した。
S校は隣ではなく2コース向こうだった事を。
後にレースの詳細を先生が教えてくれた。
「25メートルまではS校と互角だった。
だけど、ターンしてから急にスピードが上がって、
どんどんS校と差が開いていったんだ」
と。
母親にこの話をしたら、
「きっとお兄ちゃん(私の兄は死産)か
ご先祖様が優勝させてくれたんだろう」
と言われた。
でも私は違うと思ってる。
だって、レース途中で
そのコースには泳いでる人はいないって気付いたら、
絶対パニクってリレーどころじゃなかったと思うしね。
自分の頭が単純でよかったよ。

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