少年院
2018/12/22
この話は、昭和20年代の後半に起こった話です。
ある町のはずれに少年院がありました。
名前のごとく18歳未満の少年犯罪者が収容されている施設でした。
当時は、少年院の数が少なく、ちょっとした盗みで捕まった者から
殺人を犯したもの、精神異常者まで一緒に収容されていたのです。
食料事情が悪かった当時でしたが、きちんと3食出されていました。
しかし、育ち盛りの少年たちには足りず
いつも腹を減らしていました。
そんなある日、決められた作業中、
1人の少年がケガをしてしまいました。
上から物が落ちてきて首筋を深く切ってしまったのです。
幸い命はとりとめ、少年院の保健室のベッドに横たわり、
腕に注射針をつけたまま、入院生活を送ることになりました。
しかし・・・・少年はいつまでたっても良くならなかったのです。
しかも日増しに弱まっていくばかりでした。
輸血の注射を変えて、診断してみても回復が思わしくありません。
―――どうも変だ、様子がおかしい―――
医師は思いました。
少年の肌の色は、あれほどの輸血にもかかわらず
土のような色でした。
その夜、自宅に戻った医師は、こっそり
少年院へ戻り、深夜保健室の奥に潜んで様子をうかがいました。
電気不足の当時だったのでよほどの事が無い限り電気はつけず
月明かりだけの状態です。
するとドアがスーーッと開き、一つの黒い影が部屋に入ってきました。
医師は息を殺し、じっとしていました。
黒い影の背後にそっと忍び寄り、
「なにをしているんだ!!」
言うなり部屋の電気のスイッチをいれました。
そこには、
輸血ビンを抱え、口のまわりを真っ赤にした少年が立っていました。
空腹に耐えかねて、輸血の血を毎晩飲んでいたのです