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校舎から見える神社

2018/12/08

私の通っていた小学校の裏手に、雑木林に半ば埋もれているような神社がありました。
鬱蒼とした木立に囲まれている上、校舎の陰になっているので昼間でも薄暗かったせいか、そこでの思い出は常に曇り空の印象です。そういえば真夏でも深閑として、蝉の鳴き声とかもなかったような…。
私が低学年の頃にその神社の清掃を、ボランティア活動の一つとして、隔週で行っていたのですが、いつの間にか行われなくなりました。
噂では、ある学年が、その神社で記念写真を撮ったところ、築庭の大石に見知らぬお婆さんがしがみつくように写っていて、その写真を撮った日以来、その学年の生徒や先生の身の回りに事故や不幸が多発したから、とか。
真相は分かりませんが、ちょっとしたタブーになっていたのは事実です。そうそう、戦時中、空襲に焼け出されたお婆さんが、その石のところで息絶えた、というのが、まことしやかに囁かれていました。
それ以外、例えば“四つん這いのお婆さんが時速50キロで~”といったような如何にもな話は無かったですね。そういう茶化すような話は許されないような雰囲気でした。
神社は校舎の廊下から見えたのですが、皆、目を向けないようにしていたくらいです。六年生の時、ノリオとカミヤに、その神社で肝試しをする事を持ちかけられました。
カミヤは小学校の近くに住んでいて、神社なぞは遊び場の一つ、何も怖いことなんか無い、と言い出したことがきっかけだったと思います。私は神社に言い様のない禍々しいものを感じていたので、憶病者と罵られながらも、拒否しました。
その代わり、校舎3階の廊下から、二人が神社を廻ってくるのを見張ることになったのです。日は暮れかけていました。
夕焼けに赤く照らされた誰もいない廊下は、泣き出したいくらいに無気味でした。ノリオとカミヤは手を振って神社の暗がりに消えていきました。
心細く神社を眺めていると、やがて下校の合図、ドボルザークの『新世界より』が流れはじめました。距離を置いて一人づつ歩くことになっていたのでしょう、やがてカミヤが姿を現しました。
こちらを向いて何か言っています。続いてノリオがやって来ました。
私は、これで役目は済んだ、と廊下を駆け出し、二人に合流しようと学校を飛び出しました。二人を見つけ、駆け寄っていくと、ウァアーッと叫んで逃げていきます。
私は、肝試しに参加しなかったことで嫌がらせをしているのだろう、と思いました。翌日から、そして卒業するまで、二人は教室でも私を避けるようにしていました。
中学校に進んでからしばらくして、ようやく二人とも口をきくようになりました。私の方からは、あの肝試しの話題は避けていたのですが、ある日ノリオが、「今だからようやく言えるけど」と前置きして、こんな事を言いました。
あの時、校舎を見上げたら、たくさんの恨めし気な顔のお婆さんやお爺さんが、私を取り囲むようにして廊下にずらっと並んでいた、と。

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