廃墟と化した病院
2018/11/20
私は霊的現象は信じていませんでした。
私の周りに居る「自称霊が見える」人達の話も
全く信じていませんでした。
ですが、今では信じています。
信じざるを得ないと云うのでしょうか。
丁度1年前の話になります。
私とH(男)とK(男)は幼馴染。
小さい頃からいつも一緒でした。
その日も3人でN県にある、
廃墟と化した病院に肝試しに行こうとなったのです。
時刻1時。
真っ暗で周りは何も見えない。
たった一つの懐中電灯を頼りに歩きました。
夜中の病院って本当に怖い。
霊的に、とかじゃなくて理屈無しに怖い。
雰囲気だけで怖い。
余りの怖さに失禁しそうになった私を見て、
やはり肝試しは明日にしようとなりました。
(きっとHもKも怖かったんでしょうね。)
翌日昼ごろ。
雨が降っていましたが、明るく、
これなら行けそうと思っていました。
病院内に入ると、イヤ~な雰囲気。匂い。
暑いはずのに空気が生ぬるい。寒気がする。
私達は適当に病院の格部屋を廻りましたが、
少し飽きてきました。
幽霊なんて居る筈もなく、
私は内心ホッと安心していたのです。
そろそろ帰ろう、
HだったかKだったかがそう言いました。
するとその時、突然
「カーンカーンカーン・・・」
階段をハイヒール等で歩く足音が聞こえてきたのです。
もうそれだけで大パニック。
HもKも、勿論私も悲鳴もあげられず、
その場で立ちすくむだけ。
普通こんな状況でしたら必死に走って逃げますよね。
でもその時の恐怖感と云えば、
足がすくみ、身動き一つ出来ない。
だんだん足音が近くなってくるのが手に取る様にわかる。
その時でした。
Hが大声で
「走れえぇぇぇぇっぇぇぇぇぇーーーーーーー」
と言ったんです。
私とKはハッとし、
3人でダッシュで病院から逃げ出しました。
漸く車まで戻ると急いで車を出し、
無事に近くの食事処の様な場所まで着いたのです。
車の中でも、そこに着いて数分の間も、
私達は無言のままでした。
Hは汗をビッショリ掻いていました。
Kは泣いていました。
私はただただ呆然としていました。
「俺たちの他に肝試しをしていた奴が居たんだ。きっとそうだよ。」
Hは自分にそう言い聞かせるように言いました。
私とKは
「ウン、ウン、そうだよな、それしかないよな」
と返しました。
そうして私達は納得し、帰ったのです。
次の日、Kから電話がありました。
「お前見たか?」
そう言ってきたのです。
「何を?」
そう返すしかないじゃないですか。
でも本当はわかってたんです。
Kは「何か」を見た。
いつも強気のKが霊を見て泣く?私より怖がる?おかしい。
Kは続けてこう言いました。
「俺、見たんだ。病院で。足音が聞こえて・・・逃げ出しただろ?
その時、俺、チラッと後ろを振り返っちまったんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・何を見たの?・・・・」
「女だった。俺たちが逃げると共に女も走ってこっちにきたんだ。
真っ黒で長い髪をバサバサさせて、
すげえ勢いでこっちに向かって走ってきたんだ。
ものすごい形相だった。本当に殺されるかと思った。
だけど、・・・笑ってたんだ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
現在、HもKも私も今までと変わりなく仲が良いです。
でもあのときのことは誰一人話さない。
タブーになっているんです。
Kは普段嘘なんて絶対吐くような人ではないし、
電話の内容も本当だと思います。