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某国のバス

2018/11/19

我が家には訳あって母の親友母子が一緒に住んでた。
子の名前をAとするが、Aと俺は本当の兄弟以上に仲が良い。
一緒にいると何かと頼もしいんで、
先日二人で某国を旅してきたんだが、
その国の寂れた観光地で妙なバスに乗ってしまったんだな。
その国ではバスは必ず遅れて来るものだが、
それは定刻通りに来た。
それだけでも十分変なのに、中の様子はそれ以上におかしかった。
バスのいたるところに季節外れのサンザシの花が飾られており、
それより気になったのが、乗客達の不自然な態度だった。
一方には酷く暗い顔をした人々がいて、俯いて身動き一つしない。
もう一方には、明るい顔の非常に騒がしい人々。
ヨコハマタイヤみたいな気味の悪い笑顔を浮かべており、
歌ったり喋ったり踊ったりと、やたら陽気に騒いでいた。
楽しそうに見えなくもないが、
どこか排他的な雰囲気を纏う人達で、
声をかけようなんて気には全くならなかった。
暗い人達は、彼らにちょっかい出されても身じろぎせず俯いていたが、
教会の前を通過する時だけ弾かれた様に身を起し、一斉に十字を切ってた。
妙な雰囲気の中、しばらくは我慢して大人しく乗っていたものの、
段々気味悪くなってきて、俺は予定外の所で降車ブザーを押してしまった。
だが、運転手に「まだだ!」と一喝されて、停留所を通過されてしまい、
英語わからん俺の代わりにAが抗議してくれたが、取り合ってくれないようだった。
Aが怒鳴ってても他の乗客の様子は全く変わらなくて、
俺はただ不気味に明るい人たちの顔を見るのが怖くて縮まってた。
で、しばらく口論が続き、イラついたAがふいに煙草に火をつけたんだ。
普段吸うところ見たことないのに、珍しいなと思っていたら、
それまで俺達のことなんて無視してた明るい人たち全員が、
突然ヨコハマタイヤ顔をこっちに向けた。
そして同時に表情を一変させ、真っ赤になって怒り出し、
英語じゃない聞いたことのない言語で喚きながら、俺達に詰め寄って来た。
んで、俺とAは車外に引きずり出され、まさかのフルボッコw
かなりの距離を走って逃げたのに、奴らは群がるように追いかけてきた。
無我夢中で走り続け、Aに腕引っ張られてトゲトゲした生垣乗り越えると、
ようやくあきらめたようで、ゾロゾロとバスの方に戻って行った。
俺には何が起こったのか、本気で訳分からなかった。
その後立ち寄った教会で、神父さんにそれまでのこと話したら、
(怪しい目で見られはしたが)
こんなこと教えてくれた。
「そいつらはこの世のものではなく、明るい顔をしたのはきっと悪いスピリット。
暗い顔をしていたのは、運悪く奴らに捕われた人間の魂で、
死ぬこともできぬまま、イエスに救いを求め続けているのだろう」
その辺りでは、
「定刻の針の上に訪れる者は禍を連れてくる」
という言い伝えがあった。
ほんの数十年前までは、俺達と似た体験をしたなんて話も多かったそうで、
帰ってこられた人もいるし、定刻のバスに乗ったまま行方不明の人もいるんだとか。
助かるのは普通敬虔なキリスト教徒だけだから、
俺達が助かったのは実に運が良かったと言われた。
なんでも、大抵のスピリットは火を嫌うから、
煙草を吸う人間を自分達の乗り物に乗せておきたくなかった。
また、ハリエニシダ(俺達が乗り越えた生垣のトゲトゲ)は、
昔から魔除けになるといわれているから、
生垣を乗り越えてきたのもよかったのかもしれない、と。
なんで非喫煙家のくせに煙草吸おうとしたのか、
また、無茶して生垣乗り越えたりしたのかAに聞いたが、
「すごい偶然でしたね(`・ω・´)ノノノシ!」
ということらしい。
ちなみに、タコ殴りにされたというのに、
俺達二人とも引っ掻き傷や小さな痣位しかなく、
生垣を超えた際の傷のほうが酷かった。
どう説明すればいいか見当もつかず、結局警察にも届けてないし、
生垣の修復はもちろんやらされたし。
そして俺が持っていたバッグには、
子供よりも小さい足跡がたくさん付いていて、
怖いから即効捨てて買い替えたし(´;ω;`)

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