首のない体
2018/11/18
僕は当時、居酒屋でアルバイトしていました。
建物の造りは、1F駐車場、2F少人数の一般客、
3F大人数用個室、という感じです。
その居酒屋の3Fには、
倉庫になっている一室がありました。
トイレットペーパーや、
雨の日に出す傘立てなどがしまってありました。
うだるように蒸し暑い土曜の夜でした。
3Fの片づけを1人でやっていました。
突然その倉庫になっている部屋の中から、
音が聞こえました。
ガンガン、ガンガン!
?
誰かが中で何かやってるのかな・・・。
きっと他のバイトが
僕を怖がらせようとしてるんだろうと思い、
深く考えずにひょいっとドアを開けました。
部屋の中では首のない体が
仰向けで手足をバタつかせていました。
それはまるで子供が玩具をねだるような感じでした。
一瞬頭が真っ白になって立ちすくみました。
そのとき、ドアの上のほう(部屋の内側)から
女の声がしました。
はっきりと。
「こっちだよ。入っておいで。ほら。見上げてごらん。」
僕はつい覗き込みそうになっていましたが、
何とか思いとどまりました。
かといって逃げ出すことも出来ず、
まわらない頭でどうしようか考えていました。
声はなおも聞こえてきます。
「ほら。どうしたの?入りなさい。ほぅらぁぁ!」
内側にはのぼれるようなところはありません。
そこにはきっと今暴れている体に付いていた頭があるんだ。
そう思っていると、
ドアの上の淵から髪の毛が下がってきました。
やばい!降りてくる!
僕はそこでやっと逃げ出しました。
まるで水の中を歩くように足取りは重かったですが、
なんとか階段を下りました。
背後では、
「待てえぇぇぇ・・ぇぉぉ・・・・。」
という声がしばらく聞こえていました。