喰ってやる
2018/11/14
これは、私の従兄(以下K)が実際に体験した話です。
Kは不思議な夢を見た。
いつの間にか、
真っ暗闇にKは居たそうだ。
遠くの方でかすかにゴリゴリとかボキボキとか、
変な音がする。
その音は決して気持ちの良い音、
とは言えない。
Kは、何か嫌な予感がして
その音がする方へ走っていく。
次第に音が大きくなっていくのが分かった。
そして、いつの間にかすぐ横で、
何かがぼうっと光っているのに気付いた。
そちらを見ると、
着物を着た女の子がこちらに背を向けて座っている。
どうやら、音はその子が発しているようだ。
Kはその女の子の前に回り込んで
何をしているのか見ようとした。
しかし、その光景を見た瞬間、
Kは何とも言えない感覚に襲われたそうだ。
口が異常に大きな、こけしのような女の子が、
Kの妹を足の方から喰っているのだ。
女の子が口を動かす度にゴキゴキ音がする。
妹はすでに気を失っているようだ。
あまりの惨さにKは座り込みそうになったが、
妹を助けなければ、と思い、
その女の子を蹴り飛ばし、
妹を抱き上げ必死に名前を呼んだ。
しかし、妹は気がつかない。
後ろの方で、女の子はうめいている。
とにかく、今のうちに逃げてしまおう、
と思い、Kは妹を抱えて走り出した。
少し走ると、
前方にドアがぼうっと浮かび上がってきた。
Kは
「あそこまで行けば助かる!」
と思い、必死になって走り続けた。
そして、後少しで辿り着く、
というところで、背後に女の子の気配を感じた。
このままでは追いつかれてしまう、
と思うがドアはもう目の前。
手を伸ばしてドアノブを回し、
まさにドアの向こうへ行こうとした瞬間、
服を引っ張られ、Kは後ろに倒れてしまった。
目の前には女の子の顔。
その子はKの耳元で
「許さない許さない許さない
喰ってやるお前も喰ってやる!」
と、かすれ声で呟いた後、
Kの耳に喰い付き、そのまま引きちぎった。
痛みと恐怖に悲鳴をあげ、
その女の子を殴り飛ばし、
妹を再び抱え、ドアを通った後、
勢いよく閉めた。
その瞬間目が覚めた。
あまりの気味の悪さに息が切れ、
汗でびっしょりになっているが、
そこから抜け出したことに安著の溜め息をついた。
しかし、その瞬間
「今度は皆喰ってやる」
と耳元で聞こえたそうだ。
驚いて振り向いたが誰も居なかった。
それから、あの夢は見ていないそうだが、
ただの気味の悪い夢ではなかったらしい。
現に、妹さんはこの3年間で2度も事故に合い、
2度共足を骨折している。
それから、Kは右耳(ちぎられた方)が
あの日以来聞こえにくくなったそうだ。
もう二度と見たくはないし、
そう祈っているとKは言っていた。