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地元の名士の家

2018/11/10

彼女の実家がベッドタウンの住宅街にあるんだ。
1970年代後半くらいから人が集まり出した地域らしくて、
彼女の実家も転入組。
だからPTAだとか、パートだとか、習い事とかで知り合った人以外とは
あまり面識がないってのが普通らしい。
彼女の家のはす向かいの家から十字路をまたいだところに、
すごく古い家があるらしい。
ベッドタウンになる前からそこに住んでいる人らしい。
実際、表札にかかっている名字は、
その隣町(っていうのか?○○市××の××の部分)の地名にもなっているし、
老舗の商店だとか、前の前の前の市長の名前とかに見られる、
いわゆる地元の名士の一族らしい。
でも、その地域の××さんの多くが、
町の主要な施設、政治で華々しい活躍をされているのに対し、
彼女の家の近所の××さんは何をしているのかも知れないし、
記憶にある限りでは顔も見たことがない。
小学校入学前に転居してきて、もう今年で24にもなるというのに。
もしかしたら誰も住んでいないのかも、とも思ったが、
夜になると、ボンヤリと60ワットくらいの電球が灯っているのが見える。
それだけが、かろうじて在宅を知るてがかりだったわけだ。
つか24年間も近所の住人に顔も見られずに、
食事だの銀行だの娯楽だのゴミ出しだのはどうしていたんだよ、
と怪しい話だが、彼女の母親も、
地域の集まりや他の行事でも一切面識がないと言う。
家族構成がどうなっているのかも全く知らない。
それが今年の6月。
仕事が遅くなって夜の10:30を回った頃だ。
駅から家路を急いでいると、
××さんの家の前に人だかりができている。
野次馬が集まっているような感じではなくて、
お客さんが大勢、もてなしてくれた家人に
別れの挨拶をしているような様子だったらしい。
十字路を照らす街灯の向こう側の暗がりに、
礼服姿の男性、着物姿の女性が15,6人くらい、
玄関に向かって整列して、おじぎを繰り返していたらしい。
後姿だったんで顔は見えなかったらしいが、
髪形からして、ほとんどが中年かそれ以上の年齢に思えたとか。
××さんの家にお客さんか、珍しいな、
と思いながら通り過ぎたが、違和感がある。
玄関の戸はいつもどおり閉じられている。
つまりその集団は、誰に向かうでもなく挨拶を繰り返しているのだ。
明かりは消えている。
××さんの家の明かりは、9時を回ったあたりでいつも消えるのだ。
それに気づくと彼女は不気味に思って、
見ないようにして足早に家に逃げ帰った。
二階の自室の窓から恐る恐る十字路の方を覗き見ると、
もうその人達はいなくなっていた。
思えば、あれだけの人数が揃って頭を下げていたのに、
誰も一言も発していなかったように思えたとか。
その一月後。
金曜の深夜に自室でジョジョの最新巻を読んでいたら、
窓の外からヘッドライトの明かりが射した。
それがいつまでも消えないので窓の外を見ると、
どうやら車が××さんの家の前で止まっているようだ。
またお客さんなのかな?と注意してみると、それは霊柩車だったらしい。
急いで下の階に下りて、洋ドラを観ていた母親に
「お母さん、××さんのとこ、霊柩車きてるよ」
と伝えると、
「あら、どなたか亡くなったのかしらね」
そう言って、またドラマに戻ったらしい。
また自室に戻って窓の外を見ると、もう車は去っていたらしい。
「でも変だよね。霊柩車って、病院から家とか、
お葬式の後に家から火葬場に連れて行く時に使うんだよね?」
この話を聞いた時に彼女が聞いてきたので、
「いや、家で亡くなった人を、
斎場とかお寺に連れて行ったりするのにも使うんじゃないかな」
と返しておいた。
それにしても夜中に、家の前で数分だけ停車して遺体を運ぶっていうのも、
妙な感じがしないでもないけど。
んで、今でも××さんのお宅には変わらず明かりが灯っているので、
どうやら一人暮らしではなかったようだ。

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