凄い風
2018/10/29
友達の彼氏が、急にいなくなりました。
友達は
「振られちゃった。」
と哀しそうに話しました。
彼がいなくなってから
1週間くらいたってからでしょうか。
友達から電話が来たんです。
「もしもし?」
と電話を撮ると
電話口から友達の泣き叫ぶ声が聞こえました
「何かあったの?どうしたの?」
「血だまりが、血だまりが!!
部屋が血だまりなの!!お風呂も部屋も全部!!」
「どういうこと?落ち着いて話して!」
「彼よ、彼がやったのよ。
タバコ、彼のタバコの吸殻があるの」
「吸殻?」
「それはいいの。吸殻があるのはいいのよ。
きっと私のことが嫌いだからこういうことをしたのよ。
血がまだ温かいの!」
そういうと友達は電話を切りました。
私はすぐ電話をかけなおしましたが、
話中でつながりません。
やっとつながり、私は
「大丈夫?なにしたの?」
と聞くと
「大丈夫、もう片付けたから。」
さっきの彼女とは全く違う、
冷静な態度でした。
このことから2ヵ月後、
友達の彼氏が死体で発見されました。
司法解剖の結果、
首を吊ったことによる窒息死とのことで、
自殺と判定されました。
彼の死体は左手首がぱっくり切られていて、
首を吊った状態で発見されたそうです。
友達は心神喪失状態でした。
「彼は絶対自殺なんてしていない。
何か事件に巻き込まれたのよ。」
友達はそういいました。
「何でそう思うの?」
「彼の夢を良く見た。
彼は夢のなかで必死に何かを言っているんだけど、
何を言っているのか解らなかったの。
でもきっと助けを求めていたんだと思う。
彼が夢に出てきた日の朝はね、必ず彼のタバコの臭いがした。
今吸ってたのかなって位、臭いが残ってるの。」
そして最後に彼女はポツンと言いました。
「あなたは凄い風に巻き込まれているって言われたの。
きっとね、私はもう駄目かもしれない。
やっと意味がわかった。」
この言葉を発した後、彼女口を噤んでしまいました。
魂が抜けたかのようでした。