恐怖のかくれんぼ
2018/10/28
私がまだ小学校低学年の時の話です。その夜、私は4歳上の姉とかくれんぼをしていました。
隠れる場所は2階の寝室。
探す人は「もういいよ。」の声が聞こえるまで、リビングで待つルールでした。
リビングには、姉の他に、父、母、祖母が食事を終え、寛いでいるところでした。その夜、もう何度もかくれんぼを繰り返していたので、
幼い私にはもう隠れる場所が思いつかず迷っていると、階下から姉が急かす「まだ!?」という声が何度も聞こえ、
少しでも見つかるまでの時間を長引かせようと電気を消し、すぐ見つかるだろうけれど仕方なく敷いてあった布団の中へ隠れました。
「もういいよ!」叫んでも姉が階段を上がってくる気配がありません。
それでもじっと布団の中で身をひそめて待っていました。
「もういいよ!」まだ上がってきません。
「もういいよってば!」と叫んだ瞬間、
まったく足音がしなかったのに、ドアがすごい勢いで開く音がしました。
(来た。来た。)幼い私はワクワクしながら、姉が私を探し歩くのを楽しみにしていました。
でも、ドアは開いたのに全く人の気配がありません。
(おかしいな?どうして入ってきて私を探さないんだろう?)と思いながらもまだ身をひそめていました。
「お姉ちゃん?」小さな声で聞いてみました。
返事はありません。
返事もないし、入ってもこない。
階段を降りる足音も聞いていないし、気配はないし、なんだか怖くなって布団から出ようとした瞬間、
バッ!と布団を剥され反射的に身を縮めました。
でもその時すら、人の気配がないのです。
恐る恐る振り返っても、月明かりで微かに明るい寝室に人影はありません。
その瞬間ゾッとして、すごい勢いで起き上がり、ドアへと走りました。
凄い勢いで開けられたはずのドアは、閉まっていました。
当時我が家のドアは開け閉めする度、キーという音がしていたのですが、
その音すらしないまま、ドアは閉められていたのです。
「ギャー!!」どこから出たのかわからない程の声を発しながら、
転がるほどの勢いで階段を駆け下りリビングに入ると、
姉を含めた家族4人がかくれんぼを始めた時と同じように寛いでそこにいました。
「どうしたの?すごい声出して。」と母。
「だってお姉ちゃん、探しに来たくせに返事もしてくれないで怖かったんだもん。」私がそう答えると、
「お姉ちゃん、探しになんていってないよ。」と父。
「だって、全然もういいよって言わないから、面倒くさくなっちゃったんだもん。」と祖母の膝の上で姉がそう言い、
祖母もそれに黙って頷きました。
「おばあちゃん、ほんと?」と聞くと「本当だよ。お姉ちゃんはずっとここにいたよ。」
正直祖母はどちらかというと私の方を可愛がっていてくれたので、祖母が嘘をつくとは思えません。
そして本当に嘘ならば、きっと誰かが後で種明かしをしてくれたはずです。
結局、誰からも「本当はお姉ちゃん探しにいったんだよ。」と言われないまま、そのかくれんぼは終わり、
私は姉に誘われても、もう二度とかくれんぼをすることはありませんでした。あの時、ドアを開けたのが誰だったのか。
あの時、布団を剥いだのが誰だったのか。
いまだにわからないままです。
40年以上が経ったいまでも真相がわからない、これが私の恐怖体験です。