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キャンプ場での金縛り体験

2018/10/16

あれは家族でキャンプに行った時のことでした。
当時、キャンプにはまっていて、中でもよく訪れていたそのキャンプ場は、広大な山の斜面に広く取ったキャンプサイトがぽつりぽつりとある、とても過ごしやすいところでした。
それまでに行っていたキャンプ場は駐車場のように区切られていて、すぐに隣の人のテントがあるようなところばかりで、隣の人の気配があまり感じられないそのキャンプ場を私たちはとても重宝していました。
ただ、設備はどちらかというと乏しく、夜になればトイレ以外の明かりはなく、真っ暗です。
心霊体験をしたのは、9月の連休中に行った時でした。
都内はまだまだ真夏日の続いていた頃ですが、キャンプ場は山なので夕方からは涼しさを通りこして少し寒いくらいです。
キャンプ場の夜は早く、友人家族と来ていたわけでもないので、私たちは夕食を済ませると、そそくさと後片付けをし、9時には寝る準備を整えてテントの中に入っていました。
はしゃいだせいもあり、子どもたちは寝袋にもぐりこむや、すぐに寝ついてしまいました。
私はどちらかというと寝つきが悪いほうで、普段は日が変わるくらいまで起きていることが多いので、9時に寝るのは至難の業です。
それでもすることもなく、真っ暗な中で、子どもが寝ているため夫と話もあまりできずにいると、夫はまもなく寝息を立てていました。
仕方なく目をつぶったまま寝袋に入って仰向けに寝ていましたが、あたりはしんとしています。
鳥や虫の鳴き声もあまり聞こえず、本当に静かなのです。
どれくらいたったでしょう。
どうやら眠ってしまっていたようなのですが、ふと息苦しさに私は目を覚ましました。
しかし、意識はちゃんとあるのに、目が開きません。
うまく呼吸ができず、体は地面に張り付いたようにびくともしません。
隣で寝ている夫に手を伸ばそうとしても、腕が鉛になったかのように重たくて持ち上がらないのです。
テントを設営した場所はちょうど山の斜面のすぐ脇で、私たちは山側から夫、私、子どもたちというふうに川の字になって寝ていました。
なので山の斜面に一番近かったのは夫です。
どういうわけか、その夫のちょうど頭上を通るような感じで、重たい空気が流れてきて、私の体の上に溜まっているような感覚に襲われました。
これが金縛りだろうかと、もうろうとする中で考えていました。
私の上に乗っているのは人ではないようなのですが、ものすごく邪悪な、背筋が凍るような重たい空気なのです。
息苦しさがだんだんと増していき、これは危険だと感じた私は、必死に声を出そうとしました。
最初は全く声が出ず、パニックに陥りそうになりましたが、何度目かでやっとしわがれた声が出て、その瞬間、腕を少しだけ動かすことができました。
死に物狂いで夫の腕を掴んだ瞬間、体がふっと軽くなり、金縛りが解けたのです。
金縛りは意識があるが体が寝ている状態で、科学的に証明できるものだと聞いたことがあります。
それでも、あの重たい空気が山の斜面から降りてきた感覚はどうしても想像したものと思えないのです。
それ以来、空いていてだだっ広いキャンプ場は怖くていけません。

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