白い着物を着たおじいちゃんに助けられた話
2018/10/14
これは私が中学三年生の頃の話です。
自分では誰がなんと言おうと、心霊系の体験だと思っています。中学三年の冬、受験を翌日に控えた私は、高い熱を出して寝込んでしまいました。
医者に行って薬をもらってきましたが、全然下がらず、なすすべもなくただ布団の中で横になっていました。当時の私は熱を出しやすく、下がるまでに時間がかかるのが特徴でした。
何日かすれば収まるとは思ったのですが、何しろ翌日が受験日です。まわりも自分も、もうこれは受験に行けないだろうと思っていました。
その学校は本命ではなかったのですが、実はすごく憧れている学校でした。
行かない予定の学校ではあるけれど、受けるだけ受けてみたかったんです。でも高熱のままじゃどうにもなりません。
すっかりあきらめて、いつの間にか眠りに落ちてしまいました。すると、誰かに体をゆすられて起こされたのです。
といっても、実際にはそれは夢の中での出来事でした。けれどもあまりにリアルな感触で、夢だとは思えないほどでした。
起こしてくれたのは、私が幼いころに亡くなったおじいちゃんでした。
私はそのおじいちゃんが大好きで、記憶はわずかですが、やさしい人としていつまでも心に残っていました。夢の中のおじいちゃんは白い着物を着ていました。
それでその時、幽霊になったおじいちゃんだと思ったのを覚えています。
怖いという気持ちは一切ありませんでした。
なんだかとても懐かしく、心地よいと思いました。と場面が変わり、私たちは坂道を上がっている最中でした。
細い、細い道でした。
そこを上ると山頂に着くらしいのです。会話はありませんでしたが、私はおじいちゃんと一緒で嬉しいと感じていました。
そしてその時、一瞬にして悟ったのです。それは、ゆっくり確実に上っていけば大丈夫なのだということです。
この坂道は人生の坂道だったのです。そして必要な時はいつでも、おじいちゃんがそばにいれくれるのだと、なぜだかその時、そう感じたのでした。
気がつくと、山頂に着いていました。まだ見てはいないけれど、私にはそこがどんな美しい景色なのかわかったのです。
おじいちゃんと一緒に景色を楽しもうと思い、横を見たら、もういないのです。
白い着物のおじいちゃんは消えていました。そしてその時、目が覚めました。
明け方になっていました。それと同時に、体がとっても楽になっているのに気づきました。
熱が下がったのです。
すっきりしていました。そして出発の時間になり、私は何事もなかったかのように受験に向かうことができました。
おまけに合格することもできました。ただの夢だよと、まわりの人は言いました。
でもあんな鮮明な夢は見たことなかったし、あの温もりは確実におじいちゃんだったと思います。つらいことがあるたび、また夢に出てきて助けてくれないかなあと思いますが、あれからは一度も出てきてくれません。
それでも、やさしいおじいちゃんのことだから、見守り続けてくれているのだと信じています。