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心霊現象体験 階段を上ってくる者

2018/09/22

私は子供の頃、築30年は経つだろう木造の1戸建ての家に住んでいました。古い家なので壁や天井の染みが顔の様に見えたり
自分以外誰も家にいないのに床や階段が軋む音がしたり
2階の窓から見えるお墓に夜中人影が見えたり…。毎日何かしらの心霊現象を体験していたように思います。
これはその数ある体験の中で最もゾッとした心霊現象のお話です。 その現象が起こったのは、小学校1年生の夏休み
プールに行って友達と遊んで夕方家に帰り、2つ年下の妹と子供部屋でお人形遊びをしていた時
誰かが階段を上ってくる音が聞こえました。最初は母親だと思いました。しかし下の階にある台所からは
母親が炒め物をする音が聞こえてきます。父親はまだ仕事から帰ってきていないはず…
だとすると、誰が階段を上ってきているのか…?私は急に恐ろしくなりその場から動く事が出来なくなりました。
妹はそんな状態の私を気にも留めず楽しそうに人形遊びをしていました。
幼すぎて現状の恐ろしさが分からないのでしょう。ギィ…ギィ…1段1段踏みしめる様にゆっくりと何者かが階段を上ってきます。
私は階段へ続く戸襖から目が離せませんでした。ギィ…ギィ…ギィ…音が近くなり、もうすぐ階段を上りきってしまう!そう思った時です。「ご飯よ~」と言いながら母親が2階へ上がってきました。
私は一気に緊張が解け、涙目になりながら母親にしがみつきました。夕飯を食べながら、先程の出来事を母親に話しました。
「この家古いから、きっと軋む音よ。それかアンタの気のせいよ。」と真面目に取り合ってはくれませんでした。 そして夜、ご飯を食べてお風呂に入り、録画した子供向け番組を見て
少し興奮気味に子供部屋に戻り私と妹は床に着きました。しかしなかなか寝付けず妹とふざけあっていました。するとその時、
また階段からギィ…ギィ…と誰かが上ってくる音が聞こえました。
私は夕方の事を思い出し顔を強張らせました。ギィギィギィ…すごい速さで音が上ってきます。
私の心臓はその音に呼応する様にドッドッドッと早くなりました。ザッと勢いよく戸襖が開かれました。そこには父親が立っていました。寝ずにふざけあっていたのが1階から聞こえたのでしょう。
「早く寝なさい」と怒られてしまいました。父親は私と妹の布団の間に座りました。
父親はいつも私達が寝付くまでそうやって見張るのです。見張られているので眠らない訳にもいかず
全然眠くないのに…そう思いながら私は目を瞑りました。目を瞑って、15分くらいが経った頃でしょうか
父親が1階へ降りていく音が聞こえました。私はやはり眠れず、また妹とふざけようと思い目を瞑っている妹の肩をつつきました。
しかし、妹はもう眠ってしまった様でした。眠れないな、つまらないな。
下からは父親と母親が話す声が聞こえます。その時です。ギィ…ギィ…ギィ…
また、階段を上る音が聞こえてきました。勿論、上ってきているのは母親でも父親でもありません。
夕方の奴に違いありません。私は恐ろしくなり顔まで布団を被り強く目を瞑りました。ギィ…ギィギィ…ギィ……階段を上る音が止みました。奴が、奴が来たんだ…!
私は布団の中で小さくなってガタガタと震えました。それからどれくらいの時間が経ったでしょうか
私は少し平静を取り戻していました。そして何となく好奇心で布団から少しだけ顔を出し戸襖の方を見ました。戸襖は10センチ程開いていました。
階段の踊り場は電気が付いておらず真っ暗でした。
そしてその真っ暗な中にぼんやり白い能面の様な顔が浮かんでこちらを無表情に見つめていました。私はヒッとしゃっくりの様な小さい悲鳴を上げ、慌てて布団に顔を潜らせました。
するとガタ…ガタガタガタ…と戸襖が揺れる音が聞こえてきました。それはあの能面が戸襖を開けようとする音に聞こえて私の恐怖は最高潮に達しました。「もう起きなさい」スズメの鳴く声と、母親がカーテンを引く音で目が覚めました。
気を失ってしまったのか、そのまま眠ってしまったのか、気が付けば朝になっていました。私はまた涙目になりながら母親にしがみつきました。 それから10年が過ぎた高校2年の夏、私達一家は引っ越すことになりました。引っ越しの前日、母親から父親の荷造りを手伝うように言われあまり入った事のない父の部屋に赴きました。父の部屋には高級そうな背の高い木製の棚がいくつかあり
棚には父の趣味だったミニカーや、旅行で買ったらしき置物が所狭しと飾られていました。私はそれらを1つ1つ手に取って丁寧に埃を拭き取りダンボールに詰めていきます。
そして半分程終わった頃でしょうか、大きな木彫りの置物の後ろに白い何かがある事に気が付きました。なんだろう…そう思って木彫りの置物を退けると、そこにあったのは10年前の夜
戸襖から私を見つめていたあの能面でした。その能面を見た瞬間全身に鳥肌が立ち、夏なのに体が震え歯がガチガチと音を立てました。能面はあの時と同じ無表情で私を見つめていました。私は恐ろしくなって急いで部屋を出ました。その後、父親と一緒に部屋に行き、能面に付いて聞くと
「こんなの買ったかな?」と訝し気な顔をしていました。結局、能面は荷物になるし置き場所を取るからと父親が捨ててしまいました。
今でもあの能面の正体は不明なままです。

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