本文の文字サイズ

線路の向こう側

2018/09/05

昔友達10人くらい集まって、居酒屋で飲んだ帰り道の話。
2時くらいに解散することになって、俺と友達と友達の彼女が家が近かったから一緒に帰ることになった。
俺の住んでるところはかなり田舎で、駅前くらいにしか居酒屋がない。
そのときも駅からちょっと離れたところにある居酒屋で飲んでたんだけど、友達の彼女はかなり飲み過ぎたみたいで、まあ飲んでる最中もけっこう悲惨だったんだけど、解散するときには完全につぶれちゃってて、友達がおぶって帰ることにしたんだ。
俺達の家は駅から直線的にはそんなに離れてないんだけど、その居酒屋から帰るには線路を跨がなきゃいけない。
でも線路を越えられるところがけっこう遠くにあって、ちょっとまわり道をしなきゃなんないんだよね。
でまあその場所に向けて3人で歩いてたわけだ。
友達は彼女を背負ってもけっこうしっかり歩けてたんだけど、意識の方はちょっとぼんやりしてたみたいだった。
たぶん家にたどり着いたら彼女ともどもばったりとベッドに倒れ込んで即寝入るくらいは酔ってたと思う。
で、その線路を跨ぐポイントが見え始めた頃、俺は居酒屋に眼鏡を忘れたことに気が付いたんだ。
片目だけ視力悪いから、別になくてもそれなりに見えるし、まあそのせいで眼鏡をどこかに置き忘れたりするのは俺にはよくあることだった。
飲んでる最中になんとなく邪魔になって、人に踏まれない様に隅の方に置いたままにしてた。
俺の方はあんまり飲んでなかったからそんなに酔ってなかったし、急いで眼鏡取りに行ってくればすぐに友達に追いつける自信もあった。
だから友達に言って眼鏡を取りに戻ったんだ。
たぶん15分くらいだったと思う。
眼鏡取ってその線路を越えるポイントに戻って来たとき、その友達が線路を渡らずに、線路の向こう側をぼーっと眺めながら突っ立っていた。
田舎の町だしそんなに明るい場所でもなかったから、電柱の灯りの下に立ちつくしてる
その友達がちょっと不気味に見えた。
合流してすぐに、
「わるい、待っててくれたんだ?」
って俺は聞いた。
そしたらその友達が、
「いや、今まで踏切が鳴ってて、遮断機が降りてて渡れなかったんだ」
って言った。
「そっか」
って俺は相づちを打ち、友達が歩き出すのをなんとなく待ってたんだけど、そいつはなかなか歩き出さずに、ちょっとしてから話を続けた。
「でな、踏切が鳴ってるときに、向こう側に女の人が立ってたんだよ。どっちから電車が来るのかに気とられててよく見てなかったんだけど、気付いたらその人遮断機のこっち側に入っちゃってたんだよね。それで、向こうの方へ線路を歩いて行っちゃったんだ。暗くてもう姿見えないけど。なんかよくわかんなくて、声とかかけられなかったんだけど、気になって追いかけようかと思ってたところにおまえが戻って来たんだ」
その話を聞いておれはちょっとぞっとしたけど、夜の暗い町のなかでそんな話を聞いたらそんな気分になると思う。
俺はあんまりそういうことには関わりたくないし、暗い中線路を歩いてその女を確認しに行く気にもなれなかったから、ほっといて帰ろうと友達に言って、その場を去った。
友達はかなり酔っぱらっていたんだと思う。
よくよく考えてみたら、うちの近辺では夜の11時以降は電車は走らないし、踏切なんて鳴るはずないんだ。

にほんブログ村 2ちゃんねるブログ 2ちゃんねる(オカルト・怖い話)へ

よろしければ応援お願いシマス

人気作品

人気カテゴリ

RSS