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神社裏の森での恐怖体験

2018/09/03

これは私が小学校3年生の頃のお話です。当時私と同級生達は、自宅から自転車で30分程の所にある山で良く遊んでいました。
山と言ってもほんの10分程で頂上まで登れる小さな山で、
中腹には公園が、山頂には小さな神社がありました。山は町の中にあるので、休日などは森林浴をする老夫婦や、
ウォーキングをする中年の男性、公園に遊びに来た親子など多くの人で賑わう場所でした。中腹にある公園には、近所の公園にはないような立派な遊具がたくさんあり
私も同級生達も毎日、日が暮れるまで夢中になって遊んでいました。 秋のある日、いつものように山の中の公園で遊んでいると
同級生の一人M子が山頂へ行こうと誘ってきました。山頂には小さな神社があるだけです。
楽しい遊具も、砂場もありません。「どうして山頂なんかに行くの?」私がそう尋ねると
M子は、神社の裏の森にフクロウがいると聞いたから見に行きたいと話しました。時間は夕方5時過ぎ、夕日が沈み掛けて辺りは少し薄暗くなりかけていました。
門限の6時までには帰らないと…そう思いましたが
M子はどうしてもフクロウが見たいと駄々をこねました。結局M子の駄々に負けて山頂へ行く事になりました。 公園から歩いて5分山頂に着きました。
夕方の神社には勿論誰もいません。M子が言っていたフクロウがいるらしい森は朱色の柵で入れないように囲われています。
森の背の高い木々がザワザワと風に揺れ、辺りは妙に静かで怖くて
内心「早く家に帰りたいな」と思いました。すると、森の中に入れそうな所を探しに行っていたM子が嬉しそうにこちらに走り戻ってきました。「森の入り口見つけた!」と言うM子に連れられ、その入り口の前に来ました。その入り口は異様な見た目をしていました。朱色の柵はそこだけ何者かに破壊されたように折れていて
柵がなくなった部分に錆びた有刺鉄線が張り巡らされていたのです。私はそれを見た瞬間心底恐ろしくなりました。他の同級生達も私と同じだったのでしょう。
みんな怯えた表情をしていました。しかしそんな私達の様子に目もくれずM子は有刺鉄線の隙間から森へと入っていきます。「M子止めようよ」「危ないよ」「もう帰ろう?」私と同級生達はM子を引き留めようと声を掛けます。
しかしM子は「せっかくここまで来たんだから」と聞きません。結局私達はM子を説得出来ず、ビクビクと怯えながら森の中に入りました。
日が完全に暮れて、辺りは更に薄暗くなっていました。森の中は落ち葉がたくさん積もっていてフカフカとしていました。
しかし、地面の起伏が激しく一部落とし穴のようになっている所もあり、
私達は何度も転びそうになったり、足を捻りそうになりながら歩きました。 森に入り10分程歩いた頃でしょうか、
先頭を歩いていたM子が「向こうに家がある」と指さしました。確かに50メートル程離れた所に家のような建物が見えました。何故こんな森の中に家が?
私は不思議に思いました。「行ってみようよ」とM子に促され
私達は進路を変え、その家の方へと歩き出しました。建物のすぐ側に到着しました。
建物は木造の家のような外観でした。
近づいてみても人が住んでいる気配は感じられませんでした。私は歩き疲れたのもあり、建物の側に立ち外観を観察していました。するとその時「ああぁぁぁ!」と同級生達の叫び声が聞こえました。
次に「どうしたの!?」と言うM子の声と、M子が同級生の元へ走り寄る音が聞こえました。
そして数秒後、今度はM子の悲鳴が聞こえました。何があったのか、私は悲鳴の聞こえた小屋の裏側へと向かいました。最初に見えたのはガタガタと体を震わせ立ちすくむM子の姿でした。
その次に見たのはM子の足元で身を寄せ合いグスッグスッとすすり泣く同級生達の姿でした。「ねえ!どうしたの!?」私が声を掛けると、M子がゆっくりと小屋の壁の方を指さしました。
私はその方向を見ました。それは恐ろしい光景でした。そこには風化して体が崩れ原型を留めていないものや
首が折れているもの、顔が割れているものなど朽ち果てた大量のお地蔵様がありました。家だと思っていた建物は地蔵小屋だったのです。私はその光景を見てゾワリと全身に鳥肌が立ち、恐怖でその場から動けなくなりました。その時です。背後からガサガサと落ち葉を踏む音が聞こえてきました。
私達は首だけを動かし一斉に音のする方向を見ました。M子がポツリと呟きました。「誰かくる」落ち葉を踏む音が近づいてきました。
しかし私は恐怖から動く事が出来ませんでした。ガサガサ、ガサ、ガサガサ落ち葉を踏む音が更に大きくなり
見えない何かが確実に近づいてきます。逃げなければ、ここから逃げなければ…。
内心そう思っているのに体は動きません。するとその時。「走って!」M子の大きな声が辺りに響き渡りました。
そして次の瞬間、私と同級生はM子に手を引かれ、引きずられるように走り出しました。起伏の激しい悪路を何度も転びそうになりながら必死で走りました。
背後からは相変わらず、私達を追いかけるような落ち葉を踏む音が聞こえてきます。一体何者が私達を追いかけてきているのか、
私は恐怖と好奇心の入り混じった気持ちで走りながら顔を後ろに向けました。するとそこには真っ黒な人影のようなものがものすごい勢いで走っている姿が見えました。
その姿を見た私は、恐ろしいのにその人影から目を離すことが出来なくなりました。「出口!出口だよ!」M子の叫ぶ声が聞こえました。
その声にハッとして私は前を向きました。その瞬間、額に鋭い痛みが走りました。
出口に巻かれた有刺鉄線が額を掠めたのです。「痛い!痛い!」突然の痛みに私は森を出たすぐ側でしゃがみこみ叫びました。
傷口を抑えていた手を放すと、手には血がべっとりと付着していました。同級生達は心配そうな顔で私を見ていました。
M子は強張った顔で森の方を見ていました。「まだ追いかけてくる…」M子はそう呟くと、同級生と痛みで座り込んでいる私の手を無理やり引き走り出しました。 その後、なんとか無事に下山し家まで帰り着く事ができました。
家に着いたのは門限の時間がとうに過ぎた夜の8時、
しかも大怪我を負って帰ってきたものでしたから親にはこっぴどく叱られました。それから私もM子も同級生達も山で遊ぶ事を禁止されました。
それ以来あの山には行っていません。あれから16年、私の額にはまだあの日の傷跡が薄っすらと残っており
傷を見る度にあの体験を思い出します。

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