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猫の鳴き声

2018/08/20

霊感って血筋と関係あるんだろうか。
俺の母方の叔母や従姉はカンが強いが、父方の方ではそんな話は聞かない。
俺は気配だけ感じる事があり、ごく稀に怪しいものが見える事もある。
この話も、見ていない話だ。
先月親が旅行に行って、俺が土産を叔父さん家に届けた。
叔父さんはオヤジの弟。
俺のバイト先がある駅の沿線に住んでるし、ここの息子は俺と2コ違いで、俺とは幼なじみみたいなもん。
目的地は坂を上がり切って少し下った所。
丘の上の閑静な住宅街。
頂上は公園だけど、俺が到達した21時過ぎには誰もいなかった。
公園の前を歩いていたら、猫の声がした。
「ウア~ン…」
って赤ん坊の声みたいな…
12月だから、もう寒鳴きって言うのかな。
声につられて公園の中を見たけど、姿は見えない。
ところがそのまま通り過ぎて、公園沿いに道が折れて下りになる辺りで、もう一度「ウア~ン」。
振り返ると、俺の斜め上にある茂みの中に白っぽい物が見えた。
何かそこから声がした気がして、俺は引き返して公園に入った。
覗き込むと案の定それは箱だった。
側面に店名とurlが印刷されてる、白い段ボール。
引っぱってみたら軽くて、ツツジの木で隠れて見えてなかったけど蓋は開いてた。
猫が閉じ込められてるとやだなって思った訳だけど、中はからっぽで、底が泥で汚れてた。
たまたまここでひと休みしてた猫が鳴いただけかもしれない。
やれやれ…と思って立ち上がろうとしたらそのまま身動きがとれなくなった。
金縛り…って実はあんまり遭った事ないんだけど、正にその状態。
うわっ、と思ったら、背後に人の気配がした。
屈んで片膝をついている俺の左の肩に、今にも顎が乗りそうな感じで、誰かが覗き込んでいる。
塾帰りの子供とかがいてもおかしくない時間ではあるけど、足音したっけ?
何より身動きできないし、動悸がして喉がキューッと締め付けられて、声も出ない。
俺はどうにか目の端で様子を窺おうとした。
ぐうっと気配が肩の上に迫り出して来る。
ちょっとだけ首が動けば、気配の主が見られる!
その瞬間。
地面に付いていない右膝、肩、背中の順で、何かが通った。
ぽん、ぽん、ぽーん!と、最後に背中を軽く蹴って。
俺は前にのめって、両手両膝をついた。
ちゃんと体が動く。
「だあああっ!」
って妙な声をあげて振り返ったけど、後ろにいた誰かも、俺の肩を通過した何かも、なーんにもいなかった。
ちょっと呆気に取られた後、俺はさっさとそこから逃げた。
叔父さん家に着いたら従弟が玄関を開けて、俺を見て苦笑した。
「遅いと思ったら、どっかで猫と遊んでたのか。」
上着を脱いでみたら、背中に泥の汚れがついていた。

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