小学校のトイレで見た髪の長い女性
2018/08/08
私が通っていた小学校は、全校生徒合わせても100人程度、山奥の田舎の小学校でした。
子供の頃には、なぜだか異常に盛り上がる怖い話ネタ。理科室の人体模型が動く、階段が夜になると1段増える、音楽室の肖像画の目が動く、トイレの花子さんなどなど、当時はそんな話題で持ちきりでした。
ある日、私が小学校3年生の夏。友達と一緒に休み時間にトイレに行こうと、2人で教室を出ました。
少人数の学校なので、各階のトイレは2ヵ所。個室が2つあるだけでした。私達が小走りでトイレに近づくと、スッと音もなく目の前に現れた、女性。
髪が腰のあたりまであり、背が高く、学校指定の制服を着ていました。先に入られてしまい、私たちは焦りました。個室は2つしかないので、残りは1つ。どちらかが待たなくてはトイレに入れません。
我先に行こうと押し合い、きゃあきゃあ騒ぎながら思いっきりトイレのドアを開けました。
「・・ねえ、誰かさっき入ったよね?」
「入ったよね?入ったよね!?」
ドアを開けたその先には、誰もいませんでした。
小さいトイレなので、どこかに隠れる場所はありません。
そして気が付いたのです。古いトイレなので、トイレのドアを開ける時には必ずギィーという音がするのですが、私たちの前にその女性が入った時には、音が全くしなかった事を。
そして、100人程度しかいない全校生徒。全員の名前は曖昧でも、顔や背格好は全員把握していました。
そう、そんな女性は、その学校には存在しなかったのです。
「「でたー!!」」
トイレに行きたい気持ちはすっ飛び、2人で転がるように走って一番近くの教室、図書室に駆け込みました。
丁度係りの同級生がいたので、事情を説明すると、やめてよ!怖い!と怒られ。あっという間にその噂は学校中に広がり、次の日には全校生徒が知ることとなりました。
休み時間になれば、そのトイレの前に怖いもの見たさでみんなが集まり。中には2人だけ勇気のある女の子がトイレの中に入り、ドアの外に10人ほどの生徒が集まり、花子さんに呼びかけをしたりしていました。
とうとうその騒ぎは先生も知る事となり、噂を流した私と友達はこっぴどく怒られ、うそつき扱いされて理不尽な思いで一杯でした。休み時間に遊び半分でトイレでふざけるのも禁止となり、いつのまにかその噂も他の噂にかき消され、誰も話さなくなりました。
実際に見てしまった私と友達は、中学で違う学校に進学したため、その子がまだ覚えているかどうかはわかりません。でも、私は初めて見た現実にはいないはずの存在。今でも目に焼き付いて離れません。
彼女はまだ、あの学校にいるのでしょうか。
