ネット上に存在する不思議で怖い話を
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情熱の結果

2018/07/28

いや~な訪問者の話をひとつ。
以前私の住んでいたアパートにはインターホンが付いているんですけど故障していまして、管理会社に申し出てても中々直しに来てくれなかった頃の事です。
1人暮らしなので実家からの荷物とか通販で購入した商品とかが宅急便で届いた時には自分で受けとらなければならないんです。
ノックがするとインターホンが故障してるのでドアまで行って覗き穴から確認してドアを開けます。
何回かはセールスとかの招かれざる人の時も有りますので、正直気の弱い私はそっと忍び足でドアまで行きます。
宅急便の人もインターホンが反応しないので少々イライラしながらノックしてる人も居てドアを開けると
『ああ、いらっしゃったんですか』
と不在通知とかを書きかけながら不満そうに言ったりします。(友達に聞くとインターホンから声が聞こえる事自体を嫌がって電池を抜いて使えなくしてる女の子も居るそうです)
本当に不在だった時の事、帰宅するとアパートの入り口に並んで設置されてる郵便受けに手作りっぽい数枚の本みたいな物が入っていました。
(何だ?これ)
って感じで郵便受けの下のゴミ箱に棄てようとした時、パタパタって足音がして小さい女の子が走って来ます。
アパートの入り口からジッとこちらを見ていた女の子は、何と言うかとても汚い格好で雨なんか降ってないのに濡れたセーターと赤い長靴を履いていました。
しかも深夜です。
私と目が合うと又道路の方へパタパタと走って行きます。
変な女の子だな、と思いましたが郵便受けから他のダイレクトメールと電気料金とかの請求書を持って部屋のドアを開けようとしていると道路の方で
『居たよ!』
と声がするのです。
(ええ?俺の事?)
と思い慌ててドアを閉めて覗き穴から見ていると間一髪のタイミングでさっきの女の子とその母親らしい中年の背の高い女性がアパートの入り口に来ました。
息を潜めて見ていると、母親は女の子に
『どこ?』
と尋ねている様でした。
母親の問い掛けに女の子は首を振っている様でした。
なおも覗いていると今度は母親が郵便受けを開け始めました。
私の住んでいたアパートは二階建で、入り口に有る郵便受けは一階と二階の合計10部屋分が集合していて上下二段になっていました。
母親は一階用の下段を覗いています。
私の部屋は一階の一番奥の105号室でしたが103号と104号と私の所の三部屋分の郵便受けから手作りの冊子が棄ててあった様でした。
どうなる事かと見ていましたが、母親はバッグから小さなノートを取り出して何か書き込み始めました。
しゃがんだ母親はペンライトを口に咥えてノートをてらしながら書いているのですが時折、フッと顔を上げてこちらを見ました。
口のペンライトの光がノートに反射して母親の顔がボウッと見えるのですが釣りあがった目をしていて髪はストレートというのでしょうか、ピタッと顔の両側に張り付いている様な感じです。
正直こんな事を書くのは嫌なのですが、しゃがんだ姿で振り向いたせいでスカートの下のストッキングが見えてしまって、これが何か子供のはく様な分厚いタイツみたいなストッキングでひどく破けていて気味が悪いのです。
母親は立ち上がると、103号の前に行きインターホンを押しました。
こんな深夜に非常識極まりないと思いましたが、しばらくすると中の人がインターホンに出てきたのか母親が何か喋っている様です。
母親は驚いた事に女の子を抱っこしてドアの覗き穴の場所に上げました。
まるで女の子をドアの向こうの住人に見せている様でした。
5分くらいそうやっていたでしょうか、今度は104号に向かいます。
104号のインターホンには応答が無いようでした。
遂に母親は私の部屋のドアに近付いてきました。
ドアの目の前に来た親子がはっきり見えました。
母親の顔は汗でびっしょりと濡れています。
ストレートスタイルと思った髪は汗で濡れて顔に張り付いていてまるで水から上がったばかりの様になっていました。
インターホンを押してきましたが当然反応は有りません。
ジッと顔をインターホンにくっ付ける様にして何度もボタンを押しています。
押し方が弱いと思ったのでしょうか、グイグイと何度も押しているのです。
私はドアの前で一切の物音も立てないようにしていました。
居留守がばれるとあの親子の様子ですから何をしでかすか分かった物じゃ有りません。
それこそ息も止めていたほどでした。
インターホンを押すのを止めた母親はドアノブに手をかけました。
信じられませんが下を見るとドアノブが動いています。
何度もガチャガチャとやった後、
親子はやっと諦めたようでアパートの入り口の方へ戻っていきました。
(いや~まいったな。やっと帰ったか)
ドッと疲れた私は玄関から部屋へ入り照明のスイッチを押そうとして手に持った鞄を床に置きました。
部屋のドアを開けようとした時にフッと思いついたのですが私のアパートの一階の各部屋には外に洗濯機なんかを置いておくスペースが有ります。
アパートの入り口から横へ廻ると各部屋のそんなスペースに容易に入れるのです。
まさかとは思ったのですが、さっきの親子が部屋の外の洗濯機置き場に居たら?と思うと恐くなって部屋の明かりを点けるのを躊躇いました。
もし外で待っていたら?そこで部屋の明かりが点いたら?どうなるでしょう。
そう考え始めるとカーテンの向こうが不気味で仕方有りませんでした。
あれこれと余計な想像もはたらいてしまって、結局玄関に30分程ジッとしていました。
それからドアの覗き窓を確認して誰も居ない事を確認したあと部屋へ入ったのですが、足音を立てないように慎重にして、結局部屋の明かりは点けずにスーツだけ脱いで床にゴロンとして寝ました。
断続的な眠りをとってようやく外が明るくなり、我慢していたトイレにも行きシャワーも浴びて一息ついたところで昨夜の郵便受けを見に行きました。
103号のフタが半分開いています。
悪いとは思ったのですが覗いてみました。
【昨夜は夜分遅く、大変失礼致しました。○○(例の女性と思われる名前)】
と書かれたノートを数枚折った物が置いてあります。
さすがに中身を読むのは躊躇われすぐに元に戻しました。
104号を覗くと
【ご不在に伺い、お会いできず残念です。○○】
とあります。
うわあ、気持ち悪いなぁと思いながら、自分の郵便受けを探ってみました。
案の定ノートを数枚たたんだ紙片が入っていました。
【深夜までお仕事だったようですね。ご苦労様です。○○】
と書いてあります。
なんだ、これ?と思いながら広げてみると
【U様(私の名前です)。昨夜はお仕事でお疲れの所、突然伺いまして失礼致しました】
とあり、以下その親子が山陰のS県出身であり、親子で△△教に入信していて全国各地を廻りながら「この人は」と思った人に会って△△様の話をしている、云々と書かれていました。
なんでも一昨日は隣のK県にいて昨日、徒歩で私の住むO区にやって来たそうです。(因みに私が住んでいたのは都内某空港のそばです)
5月の大型連休の直後でしたから、夜とはいえ徒歩でずっと来たからあのように大汗をかいていたのだろうか?などと思って読んでいますと最後の方に
【U様のお宅はインターホンが壊れておいでのようですね。】
とあります。
【娘が是非お会いしたいと裏でお待ちしていましたが、お気づきになられなくて残念でした】
心臓がドキッとしました。
まさか。やっぱりあそこに居た?
慌てて部屋に駆け上がり、カーテンを開けました。
するとガラスにくっきりと小さな手形が付いており、両手の間には丸い湿った跡が有るのです。
あの女の子は両手を付いて、顔をガラスにピタッと付けて中を覗いていたのです。
いったい何時までそうやって私の部屋を覗いていたのでしょうか。
近所には交番がありまして、そこのお巡りさんは非常に防犯に熱心な方のようで、防犯パトロールという活動をしています。
私の様なアパートの1人暮らしを中心に部屋を訪ねてくるのです。
偶然なのですが、夕方にお巡りさんがやってきたので今回の話をしました。
『近所でもそのような届け出は出ていませんが』
と言いながら郵便受けを確認しています。
101号と102号にはしっかり例の冊子が有りました。
さすがに不在者の私物は押収出来ないので、私の他3人が棄てた冊子を証拠として持ち帰ろうと、とり合えず私の物を
『いいですか?』
と言って調べました。
私自身、昨晩ちょっと見ただけで棄ててしまった物ですから改めてお巡りさんとジックリ見てみました。
最後のページに写真が貼り付けてありました。
若い女性が赤ちゃんを抱いて笑っている写真です。
『昨夜の人、この人ですか?』
と聞かれました。
非常にきれいな女性で、歳も若くとても昨日の親子には見えません。
そう答えると
『う~ん。新興宗教とかの手口ですかね。こういう若くてきれいな女性が大勢居るって言いたいんだろうけど・・・』
と言い、
『でも夜中に押し売りみたいな事しといて、こんな写真残したってねぇ』
と苦笑いしていました。
結局、二度とあの親子が現れる事はなく、お巡りさんも度々パトロールでお会いする様になり
(やっぱり警戒してくれてるんだなぁ)
と変に安心したりするうちに会社の転勤でそこを引っ越す事になったのです。
幸いこれといったその後の事件のような事には遭っていません。
しかし、一つだけこんな考えが今でも頭をよぎるのです。
「あの時の写真、お巡りさんが言ってた、客引きの為のニセモノ写真なのかなぁ」
あの写真は、彼女達のような信者が何もかも捨てて信仰に邁進した結果なのではないだろうか、入信する前は本当にあの写真のような幸せな親子だったのではないだろうか。
今でも全国各地をあの親子の様な変わり果てた姿になって、一心不乱に布教活動している親子が居るのではないだろうか、と。

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